飯田市「丘の上」の興亡を決するリニア中央新幹線

JR東海の山田佳臣社長は22日、名古屋市の本社で記者会見し、東京−名古屋間で2027年開業を目指すリニア中央新幹線南アルプスを貫くCルートで決定した場合、県内中間駅を飯田市街地でなく郊外にする方向で検討していることについて、「とにかく造りやすい所に造る」と説明、建設費の地元負担を求めている駅の位置決定も同社が主導する考えを強調した。

山田社長は中間駅設置場所の条件として、高低差がなく直線で建設できる地形や、用地買収のしやすさをあらためて提示。飯田市など地元側は市街地のJR飯田線飯田駅への中間駅併設を求めているが、同社長は「(自己負担するとした)5・1兆円に、在来駅に接続させるための工事費は含んでいない」とした。

鉄道会社というのはよくも悪くも保守的で昔気質な体質だと思っていたが、JR東海は予想以上に非情だったようだ。
これまでの新幹線でも線形や用地取得などの理由で都市中心駅への乗り入れができず、やむを得ず郊外に新駅をつくったという例はある。たとえば新大阪や新横浜などがそうだ。しかし、どちらの駅も在来線には接続している。
東海道新幹線で在来線との接続がないのは新富士岐阜羽島の2駅だけ*1だが、どちらも近くに在来線がないのだから仕方がない。
それに対して、リニア中央新幹線の場合は、飯田市内のどこを通っても飯田線と交わることは明らかなのだから、既存駅と接続させるなり新駅をつくるなりすればいいのだが、上の記事を読んだ限りでは飯田駅以外の場所で飯田線と接続することも考えていないように思われる。中央道飯田ICあたりか、あるいはもっと市街地から離れた場所を想定しているのかもしれない*2
うーん。
これが地元から金を引き出すためのブラフならまだいいのだけど、本気で既存鉄道ネットワークとの接続を無視ないし軽視しているのだとすれば、かなり困ったことになりそうだ。
飯田市は高速道路が開通した1970年代以降急速に郊外化が進み、いわゆる「丘の上」と呼ばれる中心市街地の空洞化が激しくなっている。「丘の上」に勢いがあった頃には、そのまわりを取り巻くようにΩ状に敷設された飯田線はそれなりに便利だったが、今ではすっかりローカル線化してしまっている。飯田市と長野や名古屋、東京などを結ぶ主要交通機関は鉄道ではなく高速バスだ。
リニア中央新幹線が開通すれば、飯田駅付近はそれなりに栄えるだろうし、飯田線との接続により近隣の天竜川沿いの集落にもある程度の恩恵があるのではないかというふうに思っていたのだが、リニア新幹線の駅を郊外につくられてしまったら「第二の中央道」になりかねない。
さて、これから飯田市はどうなるのだろうか?
えっ? リニア新幹線の駅を中心市街地から離したほうがストロー効果が弱まっていい、って? なるほど、そういう考え方もあるのか!

*1:岐阜羽島には名鉄新羽島駅が隣接しているが、これはJRの在来線とは異なり、新幹線との接続のために新線をつくったものなので、新横浜や新大阪などとは事情が異なる。

*2:国土地理院の2万5千分の1の地図で地形にでこぼこが少なく、建物が少ない場所を探してみたのだが、飯田市のあたりはごちゃごちゃしていて等高線すらよくわからなかった。