続・野猪襲来抄

野猪襲来抄 - 一本足の蛸以降に見かけたイノシシ関係の記事をピックアップ。

栃木県佐野市の中心街で10日昼頃、体長約1メートルのイノシシが出没した。

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現場は市役所から約2キロ南の住宅地。同市農山村振興課によると、イノシシは現場付近から約1・2キロ離れたやぶから出没し、約1キロ離れた秋山川の河川敷に向かったと考えられる。同市内では8日にも、大型トラックと衝突した。

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野生鳥獣の管理保護を行っている県自然環境課は「荒れた里山耕作放棄地が身を隠せるエサ場になり、住みやすい環境で数が増大していると思われる。河川敷など茂みを伝って下流の市街地にも出没するようになったのでは」と話している。

佐野市には以前ラーメンを食べに行ったことがある。佐野駅前付近を少し散策しただけなので、土地勘がないから、「中心街」の立地や雰囲気はよく知らないが、これまでイノシシが出没するようなところではなかったようなので、それなりには開けたところなのだろう。
半矢のイノシシが山から走り出て街中を暴れているだけなら突発的・例外的事象ということになるが、もし市街地付近の緑地に住み着いて繁殖しているということになればこれから慢性的・恒常的にイノシシ襲来リスクに晒されることになる。
この記事だけでは、どちらなのかがわからない。続報を待ちたい。

8日朝、徳島市南沖洲4の沖洲海岸の埋め立て工事現場にイノシシがいるのを、作業をしていた建設会社社員の男性(49)が見つけた。

男性によると、イノシシは体長約1メートルで、午前8時半と9時すぎの2回、姿を現した。水たまりの雨水を飲んだり近くの雑木林へ移動したりしたが、人を襲うような気配はなかったという。7センチほどの大きさの足跡が残されていた。

現場は堤防道路と海に囲まれ、工事関係者以外は出入りができない。堤防内側の雑木林に潜んでいる可能性もあり、男性は「すみついているのではないか」と話す。

徳島市には以前ラーメンを食べに行ったことがある。徳島駅前付近を少し散策しただけなので、土地勘がないから、(以下略)。
こちらは半矢ではなく、近所に住んでいるイノシシのようだ。もともとイノシシは山の動物で埋立地にはあまりいないはずだけど、最近、イノシシの分布状況がかなり変化してきているようだから、こういうこともあるのだろう。

瀬戸内海の島々に近年、イノシシが海を泳いで渡り、海賊のように荒らし回っている。ミカンの木の根を掘って枯らしたり、サツマイモ畑を全滅させたり。高齢化が進む島の農家の被害は深刻だ。

昨年11月下旬、愛媛県今治市の大島近くの海で、釣り船の船長、赤松美佐男さん(42)=広島県尾道市=は、思わぬ光景を目にした。海面にとがった鼻先を突き出してスイスイと泳ぐ3頭のイノシシ。釣り船を始めて十数年、海を渡るイノシシは初めてだ。網でつかまえようと追うと、巧みにターンしてかわされた。数百メートル離れた大島の浜へ上陸すると、山の中へ姿を消した。「泳ぎはものすごく達者だった」と赤松さん。

1980年ごろからイノシシが出没していた広島県大崎上島町大崎上島では、「本州側から泳いで渡ってきた」「飼育されていたのが野生化した」などの諸説があるという。瀬戸内しまなみ海道の橋で結ばれている島々では、港や海岸に泳ぎ着くイノシシの目撃情報が多い。今治市の担当者は「最も広島県寄りの島から被害が始まったことなどから、広島から海を渡ってきたと考えている」と話す。小豆島では、島の南側の海を泳ぐイノシシがよく目撃されている。対岸の四国側の岬から島の南端まで最短で約6キロで、四国から渡ってきた可能性も考えられるという。(吉田博行)

イノシシが海を泳いで渡り、瀬戸内海の島々を荒らしまわっているという記事。
有人島なら農作物や生活環境への被害が中心ということになるが、無人島の場合そのような被害がなため意外と見過ごされやすい。しかし、島嶼生態系独特の動植物が脅かされることもあり、生物多様性保全の観点からは大きな問題だ。ある意味、外来生物問題にも似ているのだが、「人間が持ち込んだものは、人間の手できっちり始末しよう」という言い分が通らないため、イノシシ対策へのコンセンサスが得られにくいとも聞く。

イノシシの北上が岩手県境に達している懸念が強まっている。県内最北の栗原市が今年10月にイノシシによる農業被害を初めて県に報告、岩手県最南の一関市ではすでに有害鳥獣としてイノシシの駆除申請が出され、許可された実績があるからだ。

栗原市がイノシシの農業被害を報告したのは宮城県が北部地域の自治体関係者らを招いて今年10月に開いたイノシシ対策に関する打ち合わせ会議。9月の県特定鳥獣保護管理計画検討・評価委員会イノシシ部会で、それまで仙台市が北限とされてきたイノシシの生息域が加美町まで北上した可能性が指摘されたのを受けて初めて開かれた。

これは、たぶん里山の荒廃とか耕作放棄地の増大などが原因ではなく、温暖化で越冬しやすくなったとか、そういったことが原因なのだろう。同じ「分布域の拡大」でも、都市近辺へのイノシシの出没とはやや異質な話題。
これまでイノシシとの戦いの歴史と記憶を持たなかった北東北で、果たして効果的なイノシシ対策が実施できるのかどうか、かなり不安だ。

昨日午後8時40分頃、全羅北道(チョンラナムド)金堤市(キムジェシ)の郵便局ATMブースにイノシシが急に入り込んでATM利用客2人を攻撃した。

この過程で、1人はイノシシに少し咬まれた後脱出したが、1人はブース枠に上った状況で30分以上イノシシの攻撃を受け、この衝撃のため病院で治療を受けている。

ドイツの小さな町・グレンツハウゼンで6日、周辺の森を徘徊していた重さ130キログラムの野生イノシシが肉屋を襲い、5000ユーロ(約55万円)の被害が発生した。

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しかし、主人も言っているようにこのイノシシはそのままソーセージや他の肉に加工され、ポークグーラッシュ(ハンガリー風シチュー)は13ユーロ、肉そのものは1キログラム22ユーロで販売されたという。損害金額の5000ユーロには遠く及ばないが、少しは修繕費のタシになったようだ。

海外ネタ2件。後者のほうは笑い話ふうに紹介している。当事者にとっては深刻なことでも傍目には滑稽に見えることもある。
イノシシ関係の話題を笑うこと自体が悪いとは言わない。いつも真面目ぶっていては疲れるだけだ。人には笑いが必要だ。でも、悲しいことに世の中には笑って済ませられることと、そうでないことがある。
イノシシの分布域の拡大により、人間との接触が増えることは、これまでイノシシ問題の中心をなしていた農作物被害に加えて、直接、人の生命・身体への被害リスクのもととなる。イノシシは元来臆病な生き物で、手負いとか餌付け状態でない限りむやみに人を襲うことはないが、それでも人間の生活空間にいるだけで人に危険が及ぶことがある。
最も危惧されるのは交通事故だ。
体重数10キロから100キロを超えるイノシシに当たったり、イノシシを避けようとしたりして、怪我をする、あるいは死に至るという事件が、近頃毎年のように起こっている。夜間の事故で目撃者がいない場合、「なんらかの理由でハンドル操作を誤ったものと思われる」で片付けられてしまうこともあり得るので、実際のところイノシシが原因で起こった事故がどのくらいあるのかは判然としない。
既に一部には警鐘を鳴らしている人もいるが、社会全体の反応は鈍い。この問題が「地方の問題」に留まっているうちは、都市部の人が意識することは少ないだろう。でも、ちょっと想像してみてほしい。たとえば、新宿御苑にイノシシが住み着いたらどうなるか。大阪城公園でイノシシが繁殖して「出撃基地」になってしまったら、どうすればいいのか、と。
……と、やや煽り口調になってしまったが、実際はそんなに気にすることはない。誰かが悪意をもってイノシシを放逐しない限り、今すぐ都市部の緑地にイノシシが生息するようなことは起こらないだろう。もし、イノシシで街を破壊しようと考える輩が出てくれば、粛々と法の裁きに委ねればいいのだ。ええと、これって法律違反ですか?
最後に、特に引用もコメントもしないけれど、いくつかの関連記事にリンクだけしておく。リンク切れになったらごめん。