ハンバーガーのタイプとトークン

ふだん、ハンバーガーはめったに食べないし、食べるのならトマトが挟まった国産Mバーガーなのだが、昨日、近所の人が同じ「M」が頭文字のチェーンのチーズバーガーをくれたので、くれるものを拒む理由はないから有難くいただいた。
食べたあとで、その人が「1週間前のを冷蔵庫に入れてあったんだけど、変な味しなかった?」と訊いてきたので、冷静さを装って「いいえ」と答えておいたのだが、内心は穏やかではなかった。
近所の人が帰ったあとで次のようにつぶやいた。

後で考えてみると、これは何となくパラドキシカルだ。もし、一般にお腹を壊す食べ物よりお腹を壊さない食べ物のほうが、他の条件が同じであれば、より安全だと言えるとすれば、ハンバーガーも食べ物のうちなのだから、ハンバーガーについても同じことが言えるはずだ。そうすると、製造後1週間経って食べてもお腹を壊さないハンバーガーのほうが、製造後1週間経って食べたらお腹を壊すハンバーガーよりも、他の条件が同じであるなら、より安全だということになるはずだ。しかし、製造後1週間経って食べてもお腹を壊さないハンバーガーが安全だと胸を張って言える人は少ないだろう。
では、この逆説はどう処理すればいいのか?
一つの解答はこうだ。製造後1週間経って食べてもお腹を壊さないハンバーガーと製造後1週間経って食べたらお腹を壊さないハンバーガーは「他の条件が同じ」とは言えない。そこにはまさに、安全性に係る大きな条件の違いがある。すなわち、添加物の有無だ。
だが、この解答は「他の条件」の解釈に難があるように思われる。製造後1週間経ったハンバーガーを食べてお腹を壊すか壊さないか、ということと、そこに防腐作用をもつ添加物がどの程度含まれているかということは連動しているのだから、「他の条件」として切り分けることはできないのではないか。
そんなことをあれこれ考えているうちに、上のつぶやきのパラドキシカルな見かけは、言葉が足りないせいではないか、と思いついた。足りない言葉を補うと次のようになる。

一般にお腹を壊す食べ物トークよりお腹を壊さない食べ物トークのほうが(他の条件が同じなら)安全です。しかし、製造後1週間経って食べてもお腹を壊さないハンバーガタイプに属するトークはお腹を壊すハンバーガタイプに属するトークより危険です。

タイプとトークンの区別については、タイプとトークンの区別 - Wikipediaを参照していただきたい。
言葉が足りないと、あたかも矛盾しているかのような奇妙な印象を受けることがあるのは、先日の環境省はシカをどう考えているのか? - 一本足の蛸で紹介した通り。自分でも同じようなことをやってしまっていたのは汗顔の至りだ。
これでもやもやが解消してすっきりした。



ちなみに、昨日ハンバーガーを食べてからまる1日経ったが、特に胃腸の働きに異状はない。

追記

言葉の補い方をもう少し整理してみた。

一般にお腹を壊す食べ物トークよりお腹を壊さない食べ物トークのほうが(他の条件が同じなら)安全な食べ物トークです。しかし、製造後1週間経って食べてもお腹を壊さないハンバーガタイプはお腹を壊すハンバーガタイプより危険な食べ物タイプです。