「2分でOK!」のテンプレパブコメの悪夢

こんにちは、公益財団法人どうぶつ基金内閣府承認)理事長の佐上邦久です。

本日は、あなたに緊急のお願いがあります。

今、環境省が動物愛護管理のあり方について私達の意見(パブリックコメント)を2件求めています。

私たち国民が法案改正について直接意見を届ける事が出来る、5年に1度しかないチャンスなのです。

そこで是非あなた様から環境省あて意見を送付していただきたいのです。

やり方はカンタンで、下記の空白を埋めて自分が同意できる意見にチェックを入れて送信ボタンを押すだけです。どうか声なきどうぶつ達のために、あなたの貴重なお時間を少しだけください。

これは酷い。
これは非道い。
パブリックコメントは人気投票やアンケート調査の類ではない。多種多様な意見をもとに政策に磨きをかけるための手法だ。したがって、大切なのは政策立案者が想定していなかった隙間を埋める助けとなるような意見だ。同じ意見のメールを大量に送ったところで、業務妨害にしかならない。
民主主義社会には確かに「数こそ力」という側面がある。選挙も議決もデモも署名も数が大きな力となる。そのため「民主主義イコール多数決原理」だと誤解している人もいるが、そうではない。民主主義には多様性を尊重するという側面もある。
パブリックコメントは多数決原理ではなく、多様性尊重に基づき設計された制度だ。だから、同一意見の件数の多寡には全く意味がない。官僚や審議会委員など、政策立案に携わる人々はごくわずかで、また、社会階層の特定の層に偏っているため、外部のさまざまな立場や考え方の人々が政策立案者とは違った観点から述べる意見を受け止めることで、少しでも偏りを補正しようというのがパブリックコメントの趣旨だ。これを多数決原理に基づく諸制度と同様に捉えて同じ意見を大量に送りつけるのは、パブリックコメントの機能を損ない形骸化へと導き、ひいては民主主義を堕落させることにもつながりかねない。
この件に限らず、パブコメに応じて意見を送ろうと思う人は、パブコメの本旨をよく理解のうえ、民主主義社会の一員としての自覚と節度を持って行動してほしい。

参考
はてなブックマーク - 公益財団法人どうぶつ基金  【拡散希望】2分でOK!動物の法律改正パブコメ1携帯メールも可!!