新聞は嘘をつく

さっき中共総領事館問題、社外執筆者に特ダネ書かれる - 産経新聞愛読者倶楽部を読んでいたら、我が目を疑うことが書かれていた。それは朝日新聞の記事を紹介した部分だった。元記事から引用しよう。

関係者によると、新たな移転候補地は同区新光町の約1万5千平方メートルの民有地。中国側は昨年12月に国土利用計画法に基づき土地を取得する際に必要な申請を市に提出したという。篠田市長は2日の市議会で、移転先としてふさわしいかや、住民の理解を得られるかなどについて「市有地でない以上、国が判断すべきこと」と述べた。

国土利用計画法に基づき申請する場合とは、第12条により指定された規制区域のなかにある土地について、第14条に基づき、所有権移転などについての許可を得るためのもので、その申請手続きは第15条で定められている。これ以外に国土利用計画法に基づく申請というのは存在しない。
で、なぜこれが「我が目を疑うこと」なのかといえば、国土利用計画法に基づく規制区域は、この制度が出来てからこれまで一度も指定されたことがない、幻の区域だからだ。いちおう法律の条文には書かれていても、土地の売買をするのに役所の許可をもらわないといけないという制度は日本国憲法第29条によって保障されている財産権を揺るがしかねないから、そう簡単に指定するわけにはいかない。こんなことは、特に国土利用計画法という個別の法律の知識がなくても少し考えればわかる程度の「常識」ではないか……と一瞬思ったのだが、よく考えてみれば、新聞記者に一般市民と同程度の憲法理解を求めるのはあまりにも酷だ。
以下余談。
国土利用計画法に基づく許可や届出に関する制度については、国土利用計画法(国土法)とは 宅建試験が詳しい。また、記事で言及されているのは新潟市の事例なので新潟市 - 市街地整備課:国土利用計画法に基づく届出制度にもリンクしておく。
新潟市長が「市有地でない以上、国が判断すべきこと」と述べたそうだが、政令指定市の市長には国土利用計画法第24条に基づく勧告権があるので、この言い方はちょっとどうかと思ったりもしたのだが、信頼できない新聞記事からの情報なので、もしかすると別のニュアンスがあったのかもしれない。