ぶよぶよとしたしまりのない国

右肩上がり - 一本足の蛸の続き。グラフを再掲する。

このグラフを作ってみようと思ったのは、数日前のことだった。
何の弾みだったかは忘れたが、Twitterで次のように呟いたのがきっかけだ。

以前から、都市またはその近郊の生活環境への鳥獣被害を懸念している。現在、獣害対策は農林水産業関係がメインで、野生動物が住宅地に襲いかかってくるような事態への備えは必ずしも十分ではない。だが、農村は着実に衰退を続けていて、緩衝地帯を失った都市はいずれイノシシ、シカ、サルなどに直面することになるだろう、という懸念だ。
もっとも、鳥獣被害の恐れというのは都市郊外化の主要な問題ではない。第二次世界大戦に擬えるのに都合がよかったので、猪鹿蝶を引き合いに出しただけで、そのような「敵」を措定しなくても都市郊外化は問題だらけだ。
たとえば、シートン俗物記[自滅する地方]シリーズを読むと、豊富な写真つきで、地方都市の抱える病理が摘出されている。残念ながら、3.11以降には[自滅する地方]シリーズの新しい記事はないが、問題そのものがなくなったわけではない。この記事群は今でも十分啓発的機能を失ってはいないと思われる。しかし、具体例に重きを置く一方で、シートン氏は統計データをほとんど提示していないため、定量的な分析がほとんど見られない*1
そこで、そもそも「都市の郊外化」とは数量的にみればどのような現象なのか、どの程度の規模とスピードで都市は拡散しているのか、ということを考えているうちに、発作的に作ってみたのが上のグラフというわけだ。これは、今考えている大きな問題へのアクセスの第一歩に過ぎないのだが、その第一歩にも統計的な難点が含まれている。その話を始めると長くなるので、またの機会に。

*1:定量的分析の欠如はシートン俗物記一般に見られる特徴であり、物議を醸す主張を定性的な議論だけで押し切ってしまうことが紛糾の一因になっているのではないかとも思うのだが、それはまた別の話。