イングランドで言うところの酷暑
- 作者: レオ・ブルース,小林晋
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/01/27
- メディア: 文庫
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さて、一度は見送った『死の扉』だが、一年後になって急遽買って読むことになった。毎月、ミステリ好きが集まって読書会をしているのだが、2月の課題本が『死の扉』に決まったからだ。
で、昨日読み終えたところだが、なるほどこれは名作だと感じた。メイントリックは今となっては古びてしまった感があり、単に犯人と動機を言い当てるだけなら全体の半分も読めば十分だろう。鮎川哲也の某長篇に同じトリックを用いたものがあり、そちらを先に読んでいるとさらな真相に気づくのが容易になる。なお、『死の扉』が日本に紹介されたのは1957年で、鮎川哲也は当然その頃にこれを読んでいるはずだが、かの20世紀最高の推理作家*1の名誉のために言っておけば、彼は前例のあるトリックを単純に再使用したのではなく、別の有名作品を踏まえたミスディレクションを施しており、全く別の作品に仕上がっている。この文章は鮎川哲也について論じる場ではないので詳述は避けるが、ちょうどカーター・ディクスンが『貴婦人として死す』で先行する某有名作品に挑戦したのとちょうどパラレルな関係になっているように思われる。
さて、『死の扉』に話を戻そう。
すぐに犯人も動機もわかってしまうのは、我々が『死の扉』の半世紀後に生きているからで、それはこの小説の欠点ではない。むしろ、バレバレの犯人であっても証拠らしい証拠がほとんどないのにどうやって犯人であることを指摘するのか、という工夫を評価すべきだろう。最終的に探偵役のキャロラス・ディーンは犯人に対してトリックを仕掛けて犯人を捕まえるのだが、それに至るまでの推理の過程を聞かされると、作中の随所に丁寧に伏線が張られていたことに感心する。この伏線の妙は21世紀になっても決して古びることがない。『死の扉』が名作だと感じた所以だ。
追記
以下、冒頭の「みっつめの理由」を記したのですが、いったんアップしたものの考えが変わったので削除します。
*1:異論は一切受け付けない。