将来予測の難しさについて

日本不動産学会が出している「日本不動産学会誌」という、そのまんまのタイトルの学会誌がある……らしい。実物は見たことがないのだが、J-STAGEで無料公開されているので、暇なときに拾い読みしているのだが、その中に地価神話の崩壊という論文があった。

本年1月1日の公示価格のうち住宅地(宅地見込地を含む)の一部では,周知のように地価変動率のゼロ地点ないしマイナス地点がかなり記録されている。具体的には,住宅地(同上)の調査地点総数10,439地点のうち,地価変動率ゼロ地点は800地点,地価変動率マイナス地点は44地点(うち宅地見込地2地点)となっている。
【略】
これらの地点の過半数は,大都市圏の中級住宅地であるから,ここでは,このような中級住宅地の価格について,(1)構造的需給要因,(2)循環的需給要因をそれぞれ分析して,中級住宅地における地価神話の崩壊を立証したうえ,これらの分析から導き出される中級住宅地の価格動向の将来についての予測にまで言及したい。

これは面白そうだと思い、読み進めてみると、各種のデータに基づき、手堅い分析が行われて、最後に次のように締めくくられていた。

以上の中級住宅地の構造的需給要因の趨勢および循環的需給要因の変動の分析から,中級住宅地価格については,次のようにいうことができる。
(1) 地価神話は,中級住宅地については昭和57年以降崩壊した。
(2) 中級住宅地価格が,将来において,昭和53年以降の可処分所得の変動率(上昇率)が同年以降の住宅地価格および建築費の変動率(上昇率)に追いつかない限り,可処分所得の変動率(上昇率)をこえて変動(上昇)することは困難であると予測される。

まったく将来予測というのは難しいものだ、と思った。
念のため言い添えておくが、この「地価神話の崩壊」は1986年の論文である。