これは小説ですか?

首長パンチ--最年少市長GABBA奮戦記

首長パンチ--最年少市長GABBA奮戦記

佐賀県武雄市樋渡啓祐市長が、官僚から転身して三度の選挙を戦った記録……という体裁で書かれた本だが、とても実話だとは思えないエピソードも多いので、小説のようにも読める。
まあ、個々のエピソードはどうでもいいのだけど、ちょっと気になったのが237ページに書かれている次の記述だ。

武雄でまちづくりを真剣に考えている人たちのネットワークもどんどん、外に広がるようになった。活気がやる気を生み、やる気がさらなる活気をうむ。好循環が回りはじめるのを実感していたが、それが数字に現れてきた。若い世代が徐々に武雄に移り住むようになり、流出人口を流入人口が上回ってきたのだ。急速な高齢化にも歯止めがかかった。

地域別統計データベースから武雄市の転入人口と転出人口のデータを引っ張ってきたので、掲げておく。

調査年度 転入者数 転出者数
1996 1963 2224
1997 1908 2207
1998 2004 2228
1999 1924 2138
2000 1936 2293
2001 1928 2304
2002 1909 2282
2003 1809 2020
2004 1784 2106
2005 1752 1989
2006 1540 1967
2007 1675 1928
2008 1582 1832
2009 1668 1918
2010 1571 1598
2011 1633 1693

この本は2010年に出版されたものなので、「流出人口を流入人口が上回ってきた」というのはその少し前のことだと思うが、上の表を見る限りでは、武雄市は一貫して転出超過の状態にある。もっとも、このデータは合併後の武雄市の領域で組み替え集計したものなので、旧武雄市の範囲に限れば転入超過になっているのかもしれない。あるいは、若者世代に限れば転入超過なのかもしれない。
『首長パンチ』に書かれていることがフィクションでないとすれば、どこかに典拠となる統計データがあるはずだが、探すのも面倒になってきたので、これ以上の詮索はしない。