貧しき人は何故富める人々の代弁者となるのか?

ある一つの社会に、少数の富める人々と多数の貧しき人々が混住しているとき。
素直に考えれば、それぞれの層の人々は次のように振る舞うはずだ。

  • 貧しき人々は不平等に憤りを感じ、富める人々に富の再分配を要求する。
  • 富める人々は貧しき人々の怠惰と無能を批判し、富の再分配要求は不当だと主張する。

だが、実際にはそれぞれの層の人々は必ずしもこのようなパターン化された振る舞いをするわけではない。

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Sense of Wanderer

発売後およそ3箇月を経ても、まだ書店で一回も見かけたことがない*1伝説の『みかにハラスメント』を後輩から借りて*2読んだ。
確かに、これは凄い。

*1:というのは単に最近マンガコーナーに行く機会が減っているからだと思う。一時期は絶望的なまでに品薄だったが、今は大きな書店ならさほど入手困難ではないとも聞く。

*2:『扉は閉ざされたまま』を貸してほしいと頼んだら、いっしょに『みかにハラスメント』も貸してくれた。

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魔術師を探せ!


魔術師と密室トリックとくれば、誰だってまず連想するのが、ランドル・ギャレット。SFミステリ「魔術師が多すぎる」は、魔法世界での殺人事件といった特異な作品でしたが、この手のファンタジーとミステリの要素を織り交ぜた世界観をものするのはなかなか困難で、思ったよりも作品数は少ないのが現状です。いわば、ロジックとマジックは反発するのだ。
この世には二種類の人間がいる。『トリックスターズ』を読んでランドル・ギャレットを連想する人と、しない人だ。
誰だってというのは言い過ぎにしても、相当数の人が『魔術師が多すぎる』を連想するものだと思っていたのだけど、好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!『トリックスターズ』感想メモリンクから辿ってみたところ、なんと誰も『魔術師が多すぎる』に言及していない*1ことがわかり、びっくりした。
もちろん、言及していないからといって連想しなかったということにはならない。*2連想したものの、「まあ、誰だって同じ事考えてるはずだから、ことさら言及するまでもないよな〜」と思った人間が若干1名、確かに存在するのだから。でも、はてなのリンクから辿っても『魔術師が多すぎる』に言及している人がいないし、Googleで検索してもBAD_TRIPしかひっかからない*3というのは意外だった。
『魔術師が多すぎる』は現在入手が困難だ。まあジャンルがジャンルだから、いつでも出版流通に乗り続けていることを期待するのは高望みかもしれない。しかし、ミステリに関心のある読者に対して、このような記念碑的な作品があることを常に情報提供し続けるのが、ミステリ界*4の責務ではないだろうか。
このままだと伝言ゲームが終わっちゃうよ。

*1:見落としがあったらごめん。

*2:逆に、言及しているなら、連想しているに違いない。自動書記で感想文を書いているのでない限り。

*3:この文章を書いている時点での話。

*4:そもそも「ミステリ界」という言葉で名指されるような特定の実体があるのかどうかは疑わしい。本当は具体的な団体名をいくつか挙げたいところだが、自主規制した結果このような表現になった。