一本足の蛸

こずえは蛸娘の夢を見た。夢のなかで彼女は扇情的な赤い着物を着せられ、見世物小屋で好奇の視線に晒されていた。「親の因業の報いで下半身が蛸の足になってしまった哀れな娘」という設定だった。着物の裾からは蝋でぬめぬめとした光沢を与えられた作り物の蛸の足が台座いっぱいにひろがっていて、その上にうつろな目をしたこずえが座っている。いや、本当は立っているのだが、こずえの足は台座の穴に収められ、観客の目には見えないようになっていた。