捨てる神あれば拾う神あり
- 作者: 谷原秋桜子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/11/30
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 31回
- この商品を含むブログ (105件) を見る
元版は確かセル画風のカバー絵だったと記憶している*1が、今回はたぶん創元推理文庫はじまって以来はじめてミギーを起用している*2。てっきり『荒野の恋』のような雰囲気をもったミステリかと思って読み始めたら全然違った*3ので驚いた。わっ、死体が血を吹くよ!
一種の密室状況で発生した殺人事件に対して、真相以外にダミーの解決が2つ提示される。1つは古典的なトリックを主としたもので、もう1つは特殊な現象を応用したもので、バランスもとれている。6つも7つも解決案が提示される多重解決物のような派手さはないが、推理の構築と崩壊の過程を十分に楽しむことができる。
事前に丁寧に伏線が張られているため、最後に明かされる真相はさほど意外ではない。だが、大筋では驚きを感じなくても細部の詰めの確かさには目を見張る人も多いだろう*4。
ビターテイストを薄めてハートフルにした米澤穂信という感じという比喩には少し首を傾げる*5が、それはともく次巻以降も続けて読みたいと思わせてくれる良作だった。