ラノベ専こそ『僕僕先生』を読むべきである

僕僕先生

僕僕先生

巷間伝えるところによれば、かのマリー・アントワネット滝本竜彦が書かないなら、森見登美彦を読めばいいのに」と述べたというが、それに続けて「支倉凍砂はいいから仁木英之をお読み」と小声で付け加えたことは案外知られていない。この一言のせいで悲劇の王妃は太古の闇黒狼神の怒りを買い、断頭台の露と消えたのであった。その後、『狼と香辛料』と『僕僕先生』を比較するのは長らくタブーとされてきた。
しかし、アンシャン・レジームは去った。21世紀は科学の時代だ。もはや我々は人外の化生を恐れる必要はない。今こそ、思う存分両作品を比較すべきときだ。
だが、詳細な分析を行うには時間的余裕がないので、ここでは『狼と香辛料』に比べて『僕僕先生』のほうが優れている点を一点のみ挙げることにしよう。
それは入浴シーンだ。『狼と香辛料』にはない入浴シーンが、『僕僕先生』にはある。しかも、着衣での入浴だ。体の線がはっきりと出た薄衣姿の美少女が、温泉の煙に包まれつつへたれニートの青年を誘い、焦らし、世にも絶妙な寸止め劇を繰り広げるのだ。
た、たまりませんなぁ、もう。
これは『僕僕先生』に軍配を上げざるを得ない*1ではないかっ!
……と書いてはみたけれど、別に『狼と香辛料』を貶めるのが目的ではありませんので、ファンの方は御容赦ください。単なる煽りですので。もっとまともな意見を知りたい人はここを参照してください。
さて、煽りついでにもう少し。
ライトノベル読みの諸君。とりわけ、ライトノベルしか読まないラノベ専よ。『僕僕先生』こそ、君たちへの仙界からの贈り物である。啓示に耳を傾けよ! 非常の掟を振りちぎれ! いっぱいいっぱい? そんなの知ったことか! 求む、救世主? そう、『僕僕先生』こそが救世主だ。
さあ、どうだ! 読むか? 『僕僕先生』に手を出すか?
何? まだ怖じ気づいているのか? ならば、臆病な君をもう一押しするために、ふたつの文章を引いておこう。上は先日の日記のコメント欄から。下は作者自身の言葉だ。ことさら「越境」などと言う必要はない−なぜならもともと垣根などないからだ−ということが感じ取れれば幸いだ。

# kameya 『僕僕先生は読んで転がりました。ラノベのお鉢を奪いやがって!と思いつつも、これが向こうで通用するならラノベもそのまま移植できるのではとか思ったりしました。』

ギャルゲやる前は、あんなのやったら負けだと思ってましたが二次創作するまではまりましたし
ミステリ読む前は、あんな二時間ドラマの原作なんて絶対つまらんと思ってましたが、
いまは寝不足になるくらい読みますし、
ラノベなんて小説じゃないと思っていましたが、生徒に借りたイリヤの空はやばいくらい面白かった。
あるジャンルを極めるのも勿論すばらしいことですが、未知の分野に手を出して見るのも
なかなか刺激のあることだと思うのでありました。一口、一口いかがですか。

*1:いちおう公平を期するために、『僕僕先生』が『狼と香辛料』に比べて劣っていると思われる点も一点だけ挙げておこう。それは視点が統一されていないということである。多視点のスタイルというわけでなく、単純に視点が混乱している場面が特に前半に多く見られた。ただし、昔から時代小説とポルノとライトノベルは複数の視点が入り乱れることに寛容なので、おそらくライトノベル読みにはさほど気にならないだろう。