幻想的なファンタジー
- 作者: ジェイン・ヨーレン,村上博基
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1985/03/31
- メディア: 文庫
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おそらく、もっと大きな書店でこの本のすぐそばを通りかかったことは何度もあるだろうし、本棚に視線を走らせたときにこの本の背表紙を通過したこともあるかもしれない。しかし、作者名にもタイトルにも全く記憶がない。たぶん、書店にたった一冊のハヤカワ文庫、という特異な状況でなければ、一生関心をもつこともなかっただろう。
これも何かの縁だ。ファンタジーは正直いって苦手だが、薄い本だし中身は短篇集だし、読んで読めないことはないだろう。中にひとつかふたつでも拾い物があればしめたものだ。そう思って、半ばもののはずみで買ったのはいつの日のことだったか……ああ、今年3月だったな。いちばん最初に書いたのを忘れていた。
で、『夢織り女』を読み終えたのは一昨日のこと。この本を買った直後に表題作を一気に読んで、このまま全部読んでしまうのはもったいないと思い、その後ちびちびと読み進めていたのだが、とうとう全部読んでしまった。ああ、もうおしまいだ。
「ファンタジー」ときけば剣と魔法の物語を真っ先に連想するような人にとっては、このような軽量級の作品はちょっと物足りないかもしれない。でも、「異世界ファンタジーとか長大なサーガとか、あんなのファンタジーじゃないよなぁ」と思う人には大いにお薦めしたい。作風は全然違うのだが、子供の頃に読んだ『10月はたそがれの国 (創元SF文庫)』を思い出した。幻想に満ち溢れたほんもののファンタジーだ。