本の値段はどう変わったか
予告どおり、消費者物価指数からみた本の値段の変化について書いてみる……つもりだったが、消費者物価指数を作成するために行われる小売物価統計調査の調査品目【エクセルファイル】をみると、書籍類で調査を行っているのはジーニアス英和辞典と岩波新書と新潮文庫*1だけで、ここで話題となっている文芸出版界の価格動向の手がかりとするには代表性に難がある。とはいえ、ほかに適当な資料もないので、いちおう参考のため平成17年基準消費者物価接続指数から全国の「総合」「書籍」「単行本A」「単行本B」*2の年平均指数を抜粋して紹介しておこう。
年 | 総合 | 書籍 | 単行本A | 単行本B |
---|---|---|---|---|
1980 | 76.9 | 49.8 | 45.7 | 48.9 |
1985 | 88.1 | 57.7 | 58.9 | 51.9 |
1990 | 94.1 | 65.6 | 67.6 | 58.7 |
1995 | 100.7 | 87.5 | 75.7 | 93.2 |
2000 | 102.2 | 96.3 | 92.3 | 97.1 |
2005 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
こうやって並べてみると、書籍の価格の上昇の度合いのほうが物価全体の上昇の度合いよりも大きいように見える。
もっとも消費者物価接続指数は5年ごとに基準年が改定される消費者物価指数を机上の計算により最新の基準年の消費者物価指数に換算したものであり、あまり厳密なものではない。長年の間には商品の品質も変われば消費者の消費行動の傾向も変わるので、今の物価と昔の物価を単純比較することはできないのだ。従って、このデータをもって笠井潔の主張が誤りであると断定することはできないのでご注意願いたい。
追記
補足とか言い訳とか蛇足とか - 副長日誌 - 私的記録にならって書いておくと、上の記事は構想5分放置15時間データ収集20分執筆30分(うち表作成15分)くらいだった。