フィールド・ミュージアム

首都圏近郊に広がる大規模な緑地空間、見沼田んぼ一帯を「見沼歴史・自然博物館(フィールド・ミュージアム)」に-という構想が、NPOや市民の手で進み始めている。見沼田んぼの環境資産を創造する会(村上明夫代表)がさいたま市内で開いた同構想に関する千葉大学名誉教授の田畑貞寿さんの市民講座には約50人の市民が参加、熱心に耳を傾けた。

【略】

田畑さんによると、フィールド・ミュージアムとは「建物の中の展示物を見るのではなく、地域に点在する自然、歴史文化、産業などを活用し、地域(フィールド)全体をミュージアム(博物館)としてとらえる考え方」。大学の研究機関や行政、NPOなどいろいろな団体と地域の人たちとの協働が必要という。

これを読んで連想した言葉がふたつ。「まちかど博物館」と「野外博物館」だ。
「まちかど博物館」というのは、地域によって違いはあるが、主に古いまちなみの民家や商店などが建物の一角に展示物を飾ってまちあるきをする人たちに見てもらうという企画を指すことが多い。三重県まちかど博物館ほか全国あちこちで展開されているが、まちかど博物館 - Google 検索をざっとみたところでは、西日本に多いようだ。ひらがなの「まちかど」を用いてやわらかさを印象づけようとしているように感じられる。1980年代あたりの造語だろうか?
「野外博物館」のほうは、もうちょっと昔からある言葉だと思う。ウィキペディアにも「野外博物館」の項がある。日本最初の野外博物館は日本民家集落博物館だそうだ。その開館は1956年。当時から「野外博物館」という言葉を使っていたかどうかは知らないが。
文部科学省社会教育調査の中の「博物館調査」では、博物館を9つの類型に分けており、そのうちのひとつが「野外博物館」だ。統計調査の分類項目になっているくらいだから、「まちかど博物館」などとは格が違う。「野外博物館」は博物館の一種だが「まちかど博物館」は一種の見立てであり博物館ではない、と言ってしまうと気を悪くする人もいるだろうからそんなことは言わないが、でももう言ってしまった。ごめん。
ところで、野外の空間、特に自然環境を博物館の展示物に見立てて、観察や実験などの活動を行うことを「野外博物館」と呼ぶことがあるらしい。以前、野生生物の研究をしているフィールドワーカーと話をする機会があり、その人の話の中に「野外博物館」という言葉が何度か出てきて、最初は江戸東京たてもの園とかリトルワールドなどをイメージしながら聞いていたのだが、どうも話がずれているのに気づき、尋ねてみると全然違う意味だった。そのとき「ああ、これは『まちかど博物館』の自然版だな」と思った。
とりとめのないことを書いてみた。博物館学や博物館史に通じているわけではないので的外れなことを書いたかもしれないが、ご容赦願いたい。