可哀想な犬

「本当は私、犬より猫が飼いたかったの」という飼い主の言葉を偶然聞いてしまったミケは愕然とした。だが、忠犬たる者、主人の望みに沿うよう努力すべきではないかと思い直し、精進に精進を重ねてとうとう猫の姿と声を獲得した。
にゃ〜。
にゃ〜。
もはやミケは誰が見ても三毛猫にしか見えない。
にゃ〜。
にゃ〜。
飼い主もミケの変身に大喜びだ。首輪に鈴をつけ、喉元を撫でてかわいがってくれる。
にゃ〜。
にゃ〜。
忠犬ミケは本懐を達した。だが、その鳴き声の悲しそうなこと!