武雄市図書館は市長所管ではない……かどうか不安になってきた

武雄市図書館は市長所管ではない - 一本足の蛸の続き。
前回の記事では、地方教育行政の組織及び運営に関する法律武雄市図書館・歴史資料館設置条例に基づき、武雄市図書館・歴史資料館教育委員会所管の施設であり、その管理について市長が口出しするのは越権行為の疑いがあるということを述べた*1。ところが、武雄市長物語を見ているとだんだんそこで述べたことが果たして現況に即しているのかどうか不安になってきた。
昨年度の図書館関係の記事をみると、教育委員会について何回か言及しているのに、今年度にはそのような言及がないのだ。

今日、たまらず、教育委員会の図書館担当を呼んで、異例の市立図書館の抜本改革について指示をした。あれだけ、議会で、訳の分からんものを含む新刊本の購入を抑え、評判の良い、あるいは歴史的に見て価値のある本を購入する!って言ってたのに、教育委員会は見事に動かず。失望した。実際、僕は図書館のヘビーユーザーでもあるけど、置いてあるべき本があんまり無い。評判の高いうちの図書館でもそのレベル。

図書館の民主化第一弾。民主化の分野は、選書。以前、図書館への不満をぶちまけて、賛否両論の意見を頂きました。今に至るまで、結局、サイトは全然変わっていない。図書館が教育委員会の所管ですので、私もいろんなことは言えないのです。私の力不足と同時に、制度の問題も多々あります。

上は去年9月の記事で、下は今年2月の記事だ*2。それに対して、今月の武雄市長物語 : 今日11時から記者会見します。武雄市長物語 : 武雄市図書館○蔦屋書店武雄市長物語 : 図書館貸出情報の扱い、ご安心ください!などでは、特に教育委員会への言及はみられない。

私は、現在1億4500万円の年間予算を最低でも1割削減し、その上で、抜本的に図書館サービスを向上させる、その決意です。その中で、企画会社としてのCCCのノウハウを公立図書館である公共施設に浸透させたい。そのことによって、市民福祉の維持向上を図る、そういった思いで、来年4月1日のリニューアルオープンに向けて、CCC、市民、議会と連携していきます。ご期待ください。

この箇所など、昨年度と同じスタンスなのであれば、CCC、市民、議会と並んで教育委員会も連携対象として言及しておくべきところだろうが、それがないということは、スタンスが変わったということ、すなわち、図書館が既に教育委員会所管ではないということを示唆しているのではないかとも考えられる。
また、この想定を補強する材料がもう一つある。

市長:はい、ええと、まずですね。指定管理者の条例だと公募が原則のようになるんですけれども、ただ、ここでしか出来ないものについては、私が認めるものについては、それはオールOKという条文があるんですね。5条だったか7条だったかちょっと忘れましたけれども。それを適用します。ですので、公募に拠らずして、こういった契約をするということは、その特殊性に鑑みて私が選ぶ。第五条はこれ議会の議決も必要になりますので、そういう手続きを踏むということになります。

これは武雄市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例のことだろう。その第5条には確かに次のように書かれている。

第5条 市長は、次の各号のいずれかに該当するときは、第2条の規定による公募によらず指定管理候補者を選定することができる。
(1) 公の施設の性格、規模、機能等を考慮し、設置目的を最も効果的かつ効率的に達成することができる団体があると認められるとき。
(2) 第3条の規定による申請がなかったとき又は前条の選定の結果指定管理候補者となるべき団体がなかったとき。
(3) 指定管理候補者を指定管理者として指定することが不可能となり、又は著しく不適当と認められる事情が生じたとき。
(4) 指定管理者が、第9条第1項の規定により指定管理者の指定を取り消されたとき。

一方、同じ条例の第13条には次のように書かれている。

第13条 この条例を教育委員会が所管する公の施設に適用する場合においては、第2条から第5条まで及び第7条から第11条までの規定中「市長」とあるのは「教育委員会」と、第3条及び次条の規定中「規則」とあるのは「教育委員会規則」とする。

この短い条例の第5条だけ参照して第13条は見落としていたということも考えにくいので、「教育委員会が認めるものについては」ではなく「私が認めるものについては」と明言している以上、武雄市図書館・歴史資料館にはこの条例の第13条の適用がないと考えるのが自然だろう。
前回の記事では、今年1月1日現在の武雄市例規集を調べて、そこに地方教育行政の組織及び運営に関する法律第24条の2による教育委員会から市長への事務権限の移譲に関する条例が見当たらないことを確認し、念のため武雄市議会平成24年3月定例会での条例制定・改正状況もチェックして万全を期したつもりだったが、どこかで見落としをしていたか、または、インターネットでは公開していない条例の動きがあったのかもしれない。
武雄市教育委員会組織図をみると、今でも図書館・歴史資料館が掲載されているが、単純に更新し忘れという可能性もあるし、または、法的には市長へ権限移譲したのちも地方自治法第180条の2の規定による委任ないし補助執行という手法を用いて、従来どおり教育委員会が事実上の管理運営を担っているという可能性もないわけではないように思う。
情報が乏しい中であれこれ言っても始まらないので、とりあえず今のところはこれでおしまい。また、気が向いたら補足するかもしれない。

*1:この記事を書いたときには社会教育法のことはすっかり忘れていた。今ざっと読んだところでは前回の記事の論旨を変更する必要がないようなのでほっとしている。興味がある人は第5条〔市町村の教育委員会の事務〕、第7条・第8条〔教育委員会地方公共団体の長との関係〕、第9条〔図書館及び博物館〕あたりを参照されたい。

*2:この間に武雄市長物語 : 図書館を民主化します。という記事もある。