一本足の蛸

ある朝、彼女が深い眠りからさめると、そこには巨大な蛸がいた。運の悪いことに、その蛸は彼女自身だった。
これはいったいどうしたことだろう。私はどうしてこんな姿になってしまったのだろう。彼女は驚いて叫んだ。いや、叫ぼうとしたが声が出なかった。なぜなら彼女は蛸なのだから。
しばらく経って、彼女は自分の身体には足が一本しかないことにも気づいた。頭とも胴体ともつかないぐにゃりとした本体から、無数の吸盤に覆われた気味の悪い野太い足がたった一本だけ生えていた。足は彼女の意志とは無関係にぐねりぐねりと波打つように蠢いていた。