叙述トリックについてのおぼえがき
三人称にみせかけた一人称
かつてウィトゲンシュタインは「高度に発展した独我論は実在論と見分けがつかない」(意訳)と言った。これは、一人称の主観描写を徹底させると、三人称の客観描写と区別がつかなくなるということで、後にこの原理を応用したトリッキーなミステリが多く書かれるようになった。残念ながら、それらの作品群が登場する前にウィトゲンシュタインは没したので、彼の感想をきくことはできないが。
品詞の誤認
名字が「奥」の人は他人から「奥さん」と呼ばれることが多い。これを利用して叙述トリックを仕掛けることができる。同じことは名字が「旦那」の人でも可能だ。ただし、「奥」という名字の人は数多いが、「旦那」という人が現実にいるのかどうかは知らない。小林信彦の小説には旦那刑事*1が登場するけれど。