ラノベの読者は何歳くらい?

時間がないので走り書き。
ある本をどのような人が本当に読んでいるのかを調べるには、国勢調査とか家計調査のように戸別訪問して調査票を配布し、回答してもらうのがいちばんだ。でも、今の御時世、そのような調査は国家権力をもってしても難しい。それに莫大な調査費用がかかる。
ある本をどんな人が買っているのか、ということなら、書店で調査が可能だ。もちろん、購買者層と読者層にはずれがあるものだし、特に低年齢層向きの本の場合はずれが大きい。アンケート調査に「この本は自分で読むために買ったものですか? もしそうでないとすれば、この本を読む予定の人の年齢を教えてください」というような項目を設けて補正することもできるが、そもそも出口調査方式が可能かどうかという問題もある。
同じく書店での調査でも、コンビニでやっているように、レジでの精算の際に書店員に客の見かけ上の年齢と性別を入力してもらうという方法なら、かなり簡便だ。この場合は、客からじかにデータを収集しているわけではないので、誤差も大きくなるが、アンケート調査の場合でも、回答者が本当のことを言っているとは限らないので、もしかしたら調査精度は同じくらいかもしれない。ただし、当然のことながら意識調査*1はできない。
アンケート方式にせよコンビニ方式にせよ全国すべての書店で悉皆調査を行うのは現実的ではないので、抽出調査ということになる。抽出調査で母集団全体の傾向を把握するのに必要な標本数を仮に*2400とする。全国の傾向を知りたいだけなら、日本中のすべての書店から無作為に400店舗を抽出すればいい。しかし、地域差や立地条件の差、書店の品揃えの差による購買者層の違いも調べたいだろう。たとえば、全国を7つのブロックに分けて、書店の立地を駅前とか郊外とか5類型に区分し、さらに書店の床面積により3大別する*3とすれば、400×7×5×3=42000店舗*4の調査が必要ということになる。ただし、地域別、立地、規模のクロス集計を行わず、個別集計で我慢するなら、これほど多くの標本はいらない。全国7地方ごとに400店舗、合計2800店舗を、立地別または規模別のそれぞれの区分に最低400店舗以上含まれるように抽出すればいい。それでもかなり無理っぽい数だが。
……と、ここまで書いて気づいたのだが、標本数というのは客の数のことだから、1店舗で仮に40人分のデータがとれるなら、調査店舗数は区分ごとに10店舗でいいのではないかという気がしてきた。これなら、抽出方法さえ間違えなければ実行可能な範囲に収まりそうだ。社会調査とか統計学とかに詳しい人の意見を聴きたい。たぶん、どこかで何か間違えているはずだから。
で、最後の問題は、いったい誰がどのような金を使ってこのような調査を行うか、ということだ。一出版社では無理だろうから、出版業界団体が金を出して行うということになるのだろうが、調査結果が即業界全体の利益に結びつくわけではなくて、たかたがデータ分析をもとに戦略を立てて成功した会社の利益になるだけなので、果たして業界全体の同意が得られるかどうか。仮に同意が得られるとしても、書店業界の協力は得られるか、という問題もある。
大学などの研究機関が調査主体となるという方法もあるが、この場合でも予算の問題が生じる。社会学や経済学の紀要にはよくアンケート調査結果をもとにした論文が掲載されているが、「街角で100人の人にききました」とか「研究室の学生を動員して家族や知人にききました」とか、そんなとんでもない「統計データ」が平然と記載されていて驚くことがある。きっと、みんな予算がなくて四苦八苦しているのだろう。
となると文化庁か……いや、あそこも金がなさそうだ。いっそ、経済センサス(仮)の中に組み入れてしまうとか。
「経済センサス付帯調査 書店における絵付き軽小説購買者の属性に関する調査」
……無理だ!

*1:「あなたはこの本を娯楽のために読むつもりですか? それとも教養を高めるつもりで買ったのですか?」というような質問。

*2:母集団の大きさや必要な精度によってこの数値は変動する。

*3:ここで挙げた区分の数は全部思いつきなので、特に意味はない。

*4:全国の書店数を遙かにこえた数なので、実際には悉皆調査ということになる。