カレーライスと鳥取人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2007/01
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鳥取県民のカレールー消費量が日本一だというのは、記憶違いか情報の入手先が不正確だったか、どちらかだと思う。というのは、この情報の出所を辿っていくと、たぶん総務書統計局が実施している家計調査に行き着くだろうからだ。
鳥取は県民一人当たりのカレールーの消費量が日本一らしいです。そういえば小学生のころ、下校中にどこかの家から必ずカレー臭がして、それを嗅ぐと「はやくうちに帰ろう」と駆け足になりました。うちでも月に三度は食べてました。しかしみんな家で食べるせいか、町にカレー屋はほとんどありません。あと、そんなにもカレー育ちの割には小説にカレーが出てきたことも一度もない。*1
- 家計調査からみた品目別支出金額及び購入数量の県庁所在市別ランキング(平成15〜17年平均)
- 家計調査からみた品目別支出金額及び購入数量の県庁所在市別ランキング(平成14〜16年平均)
- 家計調査からみた品目別支出金額及び購入数量の県庁所在市別ランキング(平成13〜15年平均)
1のリンク先は毎年更新されているらしいので、近いうちに平成16〜18年平均のデータに置き換わることだろう。2と3は国立国会図書館のインターネット情報選択的蓄積事業によるもの。カレールー*2のランキングは「油脂・調味料」のファイルに入っている。1〜3のどれを見ても、鳥取市が金額・数量ともに1位となっている。
リンク先の見出しを見れば明らかなように、このランキングは都道府県別ではなくて県庁所在市別だ。家計調査の調査規模では県全体を代表するだけの標本が確保できないので、標本数の多い県庁所在市と川崎市、北九州市のデータだけを抜き出して順位づけを行っている。したがって、仮に下関市や旭川市などでカレールーがどれだけ消費されていても、このランキングには出てこない。
どの県の人がカレールーをいちばん消費しているのかがわからなくても別に大きな問題が生じるわけではないが、品目によっては県全体の消費傾向が重要となることもあるだろう。そこで、家計調査とは別に全国消費実態調査という調査が行われている。この調査は家計調査よりも規模が大きい分、費用も嵩むので、毎月ずっと調査するわけにはいかない。そこで、5年に一度、3ヶ月のみ実施されている。
食品の消費動向は季節によってかなり異なるので年間データがないのは辛い。また、家計調査では支出金額と購入数量の両方を調査しているが、全国消費実態調査では支出金額しか調べていない。だが、ないものは仕方がない。直近の平成16年全国消費実態調査品目結果表(第1表)から、<二人以上の世帯>の全世帯について、1世帯あたり1ヶ月にカレールーに支出する金額を抜き出し、多い順に並べ替えてみた。
順位 | 都道府県 | 金額 |
---|---|---|
1 | 秋田県 | 129 |
2 | 鳥取県 | 126 |
3 | 岩手県 | 125 |
3 | 石川県 | 125 |
5 | 埼玉県 | 124 |
6 | 宮城県 | 122 |
7 | 神奈川県 | 121 |
8 | 兵庫県 | 120 |
8 | 佐賀県 | 120 |
10 | 福島県 | 118 |
10 | 茨城県 | 118 |
10 | 新潟県 | 118 |
13 | 長野県 | 117 |
13 | 奈良県 | 117 |
15 | 群馬県 | 116 |
15 | 千葉県 | 116 |
15 | 和歌山県 | 116 |
18 | 青森県 | 114 |
18 | 山梨県 | 114 |
18 | 滋賀県 | 114 |
21 | 静岡県 | 113 |
21 | 大阪府 | 113 |
23 | 京都府 | 112 |
23 | 島根県 | 112 |
23 | 福岡県 | 112 |
26 | 愛媛県 | 111 |
26 | 沖縄県 | 111 |
28 | 栃木県 | 109 |
28 | 三重県 | 109 |
30 | 山形県 | 108 |
30 | 東京都 | 108 |
30 | 熊本県 | 108 |
33 | 広島県 | 107 |
33 | 長崎県 | 107 |
35 | 北海道 | 105 |
35 | 宮崎県 | 105 |
37 | 福井県 | 104 |
37 | 岡山県 | 104 |
37 | 山口県 | 104 |
40 | 愛知県 | 103 |
40 | 徳島県 | 103 |
40 | 高知県 | 103 |
40 | 大分県 | 103 |
44 | 鹿児島県 | 100 |
45 | 香川県 | 97 |
46 | 富山県 | 96 |
47 | 岐阜県 | 92 |
ああ、残念! わずか4円の差で秋田県に首位を奪われてしまった。
ついでに、<二人以上の世帯>の勤労者世帯についても同じ仕方で表を作ってみた。
順位 | 都道府県 | 金額 |
---|---|---|
1 | 鳥取県 | 140 |
2 | 石川県 | 137 |
3 | 奈良県 | 136 |
4 | 兵庫県 | 132 |
4 | 和歌山県 | 132 |
6 | 佐賀県 | 131 |
7 | 埼玉県 | 130 |
7 | 新潟県 | 130 |
9 | 宮城県 | 129 |
10 | 秋田県 | 128 |
10 | 神奈川県 | 128 |
12 | 岩手県 | 127 |
13 | 長野県 | 125 |
13 | 福岡県 | 125 |
15 | 島根県 | 124 |
15 | 沖縄県 | 124 |
17 | 群馬県 | 123 |
17 | 静岡県 | 123 |
17 | 大阪府 | 123 |
17 | 愛媛県 | 123 |
21 | 茨城県 | 122 |
21 | 山梨県 | 122 |
21 | 山形県 | 122 |
21 | 岡山県 | 122 |
25 | 福島県 | 121 |
25 | 千葉県 | 121 |
25 | 京都府 | 121 |
28 | 東京都 | 120 |
29 | 青森県 | 118 |
29 | 長崎県 | 118 |
29 | 宮崎県 | 118 |
32 | 北海道 | 116 |
32 | 山口県 | 116 |
34 | 滋賀県 | 114 |
34 | 広島県 | 114 |
34 | 徳島県 | 114 |
34 | 大分県 | 114 |
38 | 栃木県 | 113 |
38 | 鹿児島県 | 113 |
40 | 三重県 | 112 |
40 | 熊本県 | 112 |
42 | 福井県 | 111 |
43 | 高知県 | 109 |
44 | 愛知県 | 108 |
45 | 富山県 | 107 |
46 | 香川県 | 105 |
47 | 岐阜県 | 103 |
今度は鳥取県が1位となった。
先にも触れたとおり、これはカレールーを購入するのに費やした金額のランキングなので、この順位が消費量に直結するわけではない。カレールーの値段次第では順位が入れ替わる可能性もある。また、単身世帯は数のうちに入っていないし、1世帯あたりの世帯員数も考慮外だ。よって、鳥取は県民一人当たりのカレールーの消費量が日本一
、と断言はできない。しかし、少なくとも鳥取県民は全国でも有数のカレールー消費者である、という程度のことは言ってよいだろう。
調べてみると、カレーでまちおこしを目指して、鳥取カレー倶楽部などという団体が結成され、さまざまなイベントが行われているらしい。でも「鳥取カレー」なんて聞いたこともないよ? カレールーの消費が多いからといって、カレーでまちおこしをするのは、ちょっと無理があるように思う。
先の家計調査のランキングには「外食」という区分もあり、平成15〜17年平均だと鳥取市が最下位となっている。要するに、鳥取市民は外食にあまり金を使わない。全国消費実態調査では鳥取県は<二人以上の世帯>の全世帯で36位、勤労者世帯では39位だった。つまり、鳥取県民は概して外食にあまり金を使わない。
では、カレー屋の店舗数は?
残念ながら、そのような細かい統計データは存在しないが、平成16年事業所・企業統計調査の都道府県別集計によると、平成16年6月1日現在の鳥取県内の「食堂,レストラン」は1012事業所、そのうちカレー料理店が含まれる「その他の食堂,レストラン」はわずか22事業所しかない。それぞれ全国順位では47位と45位だ。カレーは「一般食堂」のメニューにも入っているだろうが、「一般食堂」の数は392で、これも全国47位。
ちなみに、平成12年及び17年国勢調査結果による補間補正人口(平成16年10月1日)により算出した人口千人あたりの事業所数では、鳥取県は「食堂,レストラン」で30位、「一般食堂」で22位、「その他の食堂,レストラン」で30位となった。対人口比だとそれほど少ないわけではないようだ。
いろいろ書いてきたけれど、別に何かひとつの結論に向かって論じてきたのではない。だから、どうやって締めくくればいいのか迷うのだが、いつまでもだらだらと書き続けるわけにもいかないので、最後に思いつきを一言書いて終わりにしよう。
カレールーと板チョコレートは見た目がよく似ている。