団塊の世代の平均年齢は毎年1歳ずつ上昇する

今度は東京独立 - REVの日記 @はてな経由ではてなブックマーク - はてなブックマーク - はてなブックマーク - 404 Blog Not Found:日本はヤバくても、東京はヤバくないかも経由ではてなブックマーク - はてなブックマーク - 404 Blog Not Found:日本はヤバくても、東京はヤバくないかも経由ではてなブックマーク - 404 Blog Not Found:日本はヤバくても、東京はヤバくないかも経由で404 Blog Not Found:日本はヤバくても、東京はヤバくないかもに至る。長い旅路であった。
で、一読して仰天した。ええっ!

お気づきだろうか。若い人口が、日本の平均よりもずっと多いのだ。もちろん、これは他の道府県から若い人口を吸い上げている結果に他ならないが、理由はさておき、東京に関しては高齢化による衰退の懸念はずっと少ない。

この人、東京が急激に高齢化が進んでいる日本有数のヤバい都市だということを知らないのだろうか?
世田谷区あたりの高級住宅街は、戦後に居を構えた人々が高齢化し、独居老人も増えている。続いて、高度成長期に大量流入した団塊の世代を抱える郊外のベッドタウンの衰退が始まっている。先見の明のある自治*1はさまざまな策を講じているが、それでも激烈な高齢化の波を防ぎきれるわけではない。ニュータウンがゴーストタウンになる日はもう目の前だ*2
この問題について、Liner Note - 日本の高齢者は都市でこれからどんどん増えていくでコンパクトにまとめられているので、多少とも関心のある人はぜひ読んでほしい。さらに興味をもった人は『実測!ニッポンの地域力』を読んでみるといいだろう。

追記

若年層の負担という観点から見るなら全人口に占める高齢者の比率だろう。高齢者が増えていても他の年齢層も増えてれば問題ないわけで、なんで高齢者の人口の増加という視点で見るんだろう?

上で言及した『実測!ニッポンの地域力』で、著者の藻谷浩介氏は、人口の高齢化問題を考える際に「高齢化率」*3という用語が誤解の元凶だ*4と繰り返し強調している。残念ながら、今手許に本がないので、記憶を頼りにいちおう説明してみるが、藻谷氏の議論を正確に紹介しているという自信は全くないので、できれば『実測!ニッポンの地域力』そのものを参照していただきたい。
さて、説明のためにちょっとしたグラフを作成したので貼り付けておこう。

出典は、国立社会保障・人口問題研究所『日本の都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)概要の巻末表のうち、「表I-11 将来の都道府県別老年人口」と「表I-12 都道府県別老年人口の割合」だ。
たぶん、なんで高齢者の人口しか見ないんだろ?で掲げられている折れ線グラフの出典もこの「表I-12 都道府県別老年人口の割合」だと思うが、全国平均と47都道府県のデータを全部グラフにするとあまりにも見にくいので、全国平均と東京都のデータのほか、老年人口の割合がもっとも高い秋田県ともっとも低い沖縄県のデータだけ抜粋した。
この折れ線グラフだけをみると、なるほど「似たり寄ったり」ということができる。秋田県は順調にトップを走り、全国平均の少し下を東京都が追い、さらに沖縄県がその下を追う。4本の折れ線は決して交わることがない
他方、老年人口の実数を表した棒グラフのほうをみてみよう。全国の老年人口をグラフに入れると突出して棒が長くなるし、こんなところで47都道府県の平均をとっても仕方がないので省略し、秋田県、東京都、沖縄県の3都県のデータのみを掲載した。みればすぐにわかるとおり、秋田県の老年人口には大きな変化がなく、沖縄県の老年人口はじわじわと増加して2025年には秋田県の老年人口を上回ることがわかる。だが、そのような変化より、東京都の老年人口が猛烈な勢いで増加することのほうが目を惹くのではないだろうか?
さて、高齢者がこれほど増えたとき、他の年齢層も増えていれば問題ない、といえるだろうか? 話はそう簡単ではない。たとえば、老人福祉施設を考えてみよう。秋田県で必要な老人福祉施設の規模は、今後半世紀で大幅に変わることはない。もちろん老朽化した施設の修繕や立て直しなどのコストはある程度かかるだろうが。それに対して東京都では、これからどんどん増える高齢者のために、老人福祉施設新設のための莫大なコストを今後社会全体で負担する必要が生じる。
老年人口の割合が有効なのは、たとえば賦課方式の年金*5について考える場合など*6だ。それに対して、今挙げた福祉施設の例のように、ある程度長期にわたって利用可能な社会資本の整備について論じる場合には、ある時点での老年人口の割合よりも、老年人口の実数の推移のほうが重要になってくる。また、老人介護や医療に関する人材や技術といった分野でも老年人口の実数値を無視して比率だけをみて話をすませることはできない。
なお、ここから先は全くの余談になる。当然、『実測!ニッポンの地域力』とも関係がない。
上のグラフの元データは、国立社会保障・人口問題研究所が、2005年国勢調査の結果をもとに推計したものだ。推計方法は、『日本の都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)の概要【PDF】に書かれているとおりで、詳しいことはわからないが、人口に影響を与えるそれぞれの要因について、基本的に過去のある期間の推移の傾向がそのまま持続するものとして推計しているようだ。
ところで、過去数十年間、日本は関東大震災のように10万人以上の死者の出る自然災害に見舞われることがなく、大規模な戦闘や空爆による大量死も経験していない。戦後の一時期を除けば慢性的・広範な食糧不足に悩まされたこともない。しかし、今後数十年間も同様にこのような悲惨な状況から免れ続けられるという保証は全くない。そして、ひとたび大事が発生したなら、人口密集地である東京のほうが地方よりもずっと被害甚大*7だということは、誰にでも予想できることだ。
地方は衰えても東京はひとり繁栄を続ける、という類の見込みは、根拠のある予測というよりは願望混じりの想像ではないかと思う。
……と、ありきたりの意見を述べたところで今日はおしまい。明日から沖縄に行くのでしばらくこの日記の更新を中止します。

*1:たとえば、我孫子市は既に10年前に2007年問題を見越して中高年を対象にした意向調査を実施し、その結果を踏まえた事業を展開している。

*2:月刊「都市問題」2006年5月号の「特集2 : ゴーストタウンとニュータウン」、特に「集合住宅のゴースト化への変貌要因」を読むと、首都圏で既に恐るべき事態が進行中であることがわかる。そのさわりの部分はここで紹介されているが、できれば原文にあたってみてほしい。

*3:総人口に占める老年人口の割合のこと。通常、老年人口とは65歳以上人口を指す。

*4:藻谷氏によれば、「少子化」も誤解を招くもとだそうだが、ここでの話には関係ないので省略する。

*5:現在の現役世代が納めた保険料を現在の高齢者に支給する仕組みのこと。

*6:ただし、その場合は現役世代と受給世代の比率が問題となるので、単純に高齢化率で話を済ませることはできない。

*7:死者の実数はもちろん、死亡率も。鳥取県西部地震なみの地震が東京で発生したら、死亡率ゼロではすまないはず。