ひとつの時代の終わり

鳩山邦夫総務相は31日、宇都宮市で開かれた「麻生内閣の国民対話」に出席し、「地域の特色がなくなり、これ以上の市町村合併はどうかと思う」と述べ、「平成の大合併」を終了させる考えを示した。

明治の大合併は小学校、昭和の大合併は新制中学校、という目に見える核があって、それなりに地域のまとまりに応じた線引きのところが多かったが、平成の大合併にはそういうものがなく、役所の財政事情が合併の推進力になっていたため、人工的な組み合わせの合併が目立った。その地方の事情をよく知らなくても、市町村変遷パラパラ地図を見ただけで何となく不自然な感じがわかる。たとえば、岐阜県は南部に比較的面積の小さな自治体が多く、それに比べると北部には異様に面積の大きな「市」ばかり*1があって、「町」がひとつもない。合併のメリット・デメリットを論じるにはまだ日が浅すぎるが、地図上でわかるほどのバランスの悪さは今後の懸念材料のひとつではないかと思う。
ところで、平成の大合併には道州制への地ならしという側面もあったらしい。これまで都道府県が市町村の事務をサポートしていたのが、合併が進み市町村が独自に住民サービスを提供できるようになってくれば、都道府県は基礎的な事務から解放され、より広域的な行政課題に専念できる。主に広域行政に取り組むということになれば、今の都道府県の単位よりも広いエリアに道州を設置したほうが、より効率的だ……という理屈だ。この考え方によれば、道州制実現の暁には現在の都道府県は廃止することになるのだが、実際には市町村の規模はまちまちで、都道府県を廃止して道州にまとめ上げてしまったら、基本的な住民サービスが全国均一に提供されるかどうか怪しくなることだろう。
現職の総務大臣平成の大合併について実質的な終結宣言を行ったということの意義は大きい。これからは強引な数合わせの合併は減っていくことだろう。では、道州制を巡る議論はどのような影響を受けるのか、興味深い。
なお、一言で「道州制」と言っても、人によって考えているスキームが全然違う*2ので、今のところ賛成とも反対とも言えないが、個人的には「関東州」だけは勘弁してもらいたいと思っている。そんな巨大な自治体(?)が出現したら、日本からの分離独立を仄めかして、どんなゴリ押しをするのかわかったものではないから。というか、むしろ東京都を分割して、三多摩を「多摩県」にしてほしいくらいだ。そうすると、島嶼部はどうなるのか? うーん、これは難しい問題だ。静岡県編入、というのはダメかなぁ。

*1:ひとつだけ、平成の大合併に参加していない白川村が残っている。どうでもいいけど、白川村の公式サイトってorgドメインなのか……。

*2:大まかに言えば、都道府県合併という路線と国の出先機関への権限委譲という二通りの流れがあるように思う。