アレとナニ

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

カバー絵に惹かれて本を買うことを俗に「ジャケ買い」という*1が、オビに惹かれて本を買ったのは生まれて初めてだ*2。残念ながら、この文章を書いている時点では上の書影リンクに画像がないので、ここで確認されたい。
元版は3度くらい読み返して感想文も書いた*3ので、文庫版は記念に持っておくだけにしようと思っていたのだが、ぱらぱらとページをめくるとつい読み耽ってしまい、大変困った。手許には未読の本が山のように積まれているというのに。
解説は杉江松恋氏で、これも素晴らしい。桜庭一樹の非ライトノベルレーベル初文庫化ということで全く予備知識のない読者に必要な情報を提供するとともに、桜庭ファン向けに新たな視点を提示してくれる。ミステリ読みにも一般文芸*4読みにも目配りが効いている。その解説のなかに『少女には向かない職業』に影響を与えた作品をふたつ、タイトルをふせて「アレ」と「ナニ」という代名詞で言及している。アレのほうは作中にタイトルが挙がっているのですぐにわかる*5のだが、ナニのほうがわからない*6。ナニは『桜庭一樹読書日記』で紹介されているそうだから、チェックしてみればいいのだけど、残念ながら本の山に埋もれてしまっている。それに、運良く『桜庭一樹読書日記』を見つけたとして、その中で紹介されている膨大な数の本の中から、どうやって一冊の本を見つければいいのだろう。
はっ、これはもしや、チェスタトンのソレ*7ではないか! 本を隠すにはガイドブックの中、ガイドブックを隠すには本の山の中。本の山がなければケーキをお食べ積めばいいのだ。おお、なんたる巧妙なトリック!

*1:これは本来レコードに関する言葉です。為念。

*2:と書いてしまったが、これなんかも「オビ買い」と言えるかもしれない。

*3:用意するものは日本地図と東京創元社解説目録です、と桜庭一樹ファンは言った山羊の影 −幻視風景としての『少女には向かない職業』−

*4:ここでいう「一般文芸」とは「非ライトノベル」という意味ではなく「非ジャンル小説」という意味です。

*5:もう時効だと思うので告白します。恥ずかしながら、実は『少女には向かない職業』を読む前にアレを読んでいなかった。読了後、「これはいけない」と思って慌てて書店に走ってアレを買ってきて、他人と話をするときにはあたかもずっと前にアレを読んでいたかのように語ったものだ。

*6:エラリー・クイーンの某作品か、そのクイーンが唯一ライバル視した作家の某作品のどちらかではないかと思ったが、確証がない。

*7:アレとナニが既出なので。