狼と香辛料の憂鬱

狼と香辛料〈7〉Side Colors (電撃文庫)

狼と香辛料〈7〉Side Colors (電撃文庫)

一般オタの間では大人気だが、ラノベオタの間では既に過去の作品扱いされてるっぽい*1狼と香辛料』最新刊はシリーズ初の短篇集で、今はなき「電撃hp」に掲載された「少年と少女と白い花」「林檎の赤、空の青」に書き下ろしの「狼と琥珀の憂鬱」を加えた三本立てだ。前二作は初出時に読んであるが、いちおう最初から再読してみた。以下、簡単に感想を記す。

少年と少女と白い花

時を経てなお残る作品の凄さ

林檎の赤、空の青

時を経てなお残る作品の凄さ

狼と琥珀の憂鬱

時を経てなお残る作品のすご……ごめん、これは初読だった。
これは「シリーズ初のホロ視点」が売りなのだが、正確にいえば「シリーズ初の全篇ホロ視点」ということになる。なぜなら、『狼と香辛料』の1巻の冒頭がホロ視点だからだ。
ホロ視点だと地の文にあの花魁言葉もどきが乱舞してさぞ読みにくかろう、と思ったのだが、これは早合点だった。視点人物はホロだが、一人称ではなく三人称で、地の文はふつうの日本語だった。
2巻直後の出来事を扱った番外篇で、ストーリーに全然進展はないのだが、どうせ本篇のほうも足踏みしているのだから気にならない。素直に語りのうまさを堪能すべきだろう。
ホロ視点をやってしまったらもう後がないのではないかと思ったが、支倉凍砂の筆力をもってすればノーラ視点でもアマーティ視点でも工場長視点でもお茶の子さいさいだろう。次はぜひ、ロレンスとハセ・クライスナー工場長の邂逅を描いてもらいたいものだ。
たとえばこんな感じ(以下便宜上引用タグを使っていますが、実在する本の粗筋の引用ではありません。念のため)。

カドカワ商会が牛耳る都市ノベルノブルクを訪れたロレンスとホロ。二人はそこで神学生崩れの抱き人形職人、ハセ・クライスナーと出会う。カドカワ商会のお家騒動で独立したツグヒコ一派が立ち上げたデンゲキ商会が本家のカドカワ商会一門に出戻ったのを知ったロレンスは、ハセの耳と尻尾つき抱き枕を使った商売を思いつく。カドカワ商会の威光で開催される冬のアニマ大祭で抱き枕を売ろうとハセに持ちかけたのだが……? しかし、締切を過ぎても抱き枕を仕上げることができないハセ・クライスナーを襲う果てしない苦悩の日々。果たしてハセは抱き枕を完成させることができるのか。すぱイしー ているずの次の更新はいつか。シリーズ初の工場長視点で語られる「工場長と砂色の分裂」に加えて、「電撃h&p」に掲載されて好評を博した「学園ホロたん(ハートマーク)」を収録。

*1:「一般オタ」「ラノベオタ」はここから借用した。