狼と香辛料の憂鬱
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2008/02/07
- メディア: ペーパーバック
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時を経てなお残る作品のすご……ごめん、これは初読だった。
これは「シリーズ初のホロ視点」が売りなのだが、正確にいえば「シリーズ初の全篇ホロ視点」ということになる。なぜなら、『狼と香辛料』の1巻の冒頭がホロ視点だからだ。
ホロ視点だと地の文にあの花魁言葉もどきが乱舞してさぞ読みにくかろう、と思ったのだが、これは早合点だった。視点人物はホロだが、一人称ではなく三人称で、地の文はふつうの日本語だった。
2巻直後の出来事を扱った番外篇で、ストーリーに全然進展はないのだが、どうせ本篇のほうも足踏みしているのだから気にならない。素直に語りのうまさを堪能すべきだろう。
ホロ視点をやってしまったらもう後がないのではないかと思ったが、支倉凍砂の筆力をもってすればノーラ視点でもアマーティ視点でも工場長視点でもお茶の子さいさいだろう。次はぜひ、ロレンスとハセ・クライスナー工場長の邂逅を描いてもらいたいものだ。
たとえばこんな感じ(以下便宜上引用タグを使っていますが、実在する本の粗筋の引用ではありません。念のため)。
カドカワ商会が牛耳る都市ノベルノブルクを訪れたロレンスとホロ。二人はそこで神学生崩れの抱き人形職人、ハセ・クライスナーと出会う。カドカワ商会のお家騒動で独立したツグヒコ一派が立ち上げたデンゲキ商会が本家のカドカワ商会一門に出戻ったのを知ったロレンスは、ハセの耳と尻尾つき抱き枕を使った商売を思いつく。カドカワ商会の威光で開催される冬のアニマ大祭で抱き枕を売ろうとハセに持ちかけたのだが……? しかし、締切を過ぎても抱き枕を仕上げることができないハセ・クライスナーを襲う果てしない苦悩の日々。果たしてハセは抱き枕を完成させることができるのか。すぱイしー ているずの次の更新はいつか。シリーズ初の工場長視点で語られる「工場長と砂色の分裂」に加えて、「電撃h&p」に掲載されて好評を博した「学園ホロたん(ハートマーク)」を収録。