お盆の高速道路大渋滞に期待する

土日の高速道路料金割引のせいで、各地の公共交通機関が打撃を受けている。昨年の燃料高騰や不景気による交通需要の減少とのトリプルパンチで、特にフェリー業界は存亡の危機を迎えており、減便や航路廃止が相次いでいる。鉄道乗客数も激減しており、いくつかの鉄道会社は割引企画きっぷで応戦していており乗客数の面では一定の効果を上げているようだが、果たしてそれが安定的な収益に結びつくかどうかは疑問だ。高速バスも悲惨だ。自家用車ではないから高速道路料金一律1000円の恩恵を受けられないばかりか、割引のせいで発生した渋滞に巻き込まれてダイヤが乱れ、定時性・速達性が大いに阻害されている。寡聞にして具体的な報道は見聞きしたことはないけれど、トラック物流業界も悪影響を受けているものと思われる。
高速道路料金の割引が交通システムに与えるダメージが徐々に見えてきており、常識的に考えればならこの状況は何とかしなければならないということは明らかだが、政府はこの政策を見直すどころかお盆期間中は平日にも適用することを決めている。じゃあ、野党はそれを強く非難するかと思えば、民主党などは高速道路料金の原則無料化を公約として掲げる始末。ああ、この国には交通問題をまじめに考えようという気風はないのか!*1
そこで考えた。
お盆に大渋滞が発生したらどうだろう。高速道路会社の予測では昨年の2倍だということだが、その予想を上回る、前代未聞、かつて我々が体験したことがない摩訶大々渋滞*2が発生し、前にも後ろにもにっちもさっちも動けない状態が1週間くらい持続して、人々は車を乗り捨てて歩き出し、灼熱のアスファルトの上で体力を消耗し、理性が減退し、脱水症状を起こし、疲労困憊して倒れ込んでも救急車はこず、救助ヘリのホバリングに煽られて意識は混濁し、ヤケになって暴動を起こして、車体の破壊、放火、略奪、暴行、魂の殺人*3、身体の殺人などが多発し、おまけに時期が時期だから冥府から里帰りした死者たちが調子に乗って暴動に加わり、憑依し、金縛りを起こし、託宣し、解脱し、空中浮揚し、何が何だかわからない乱痴気騒ぎ、ソドムとゴモラの宴が繰り広げられることになるのではないか。ふふ。うふふ。さすれば政府与党も野党も多少は考えを改めて、「や、経済対策も大切だけど、やっぱり物事にはバランスが肝腎だねっ」と気づくのではないかと夢想するのだけれど、如何?
……とまあ、わざと大仰なことを書いたが、もちろん暴動など起こらないに越したことはないわけで、仮にこの国の交通政策に対する警鐘として効果があるとしても、略奪暴行の類が正当化されるわけではないことは論を俟たない。ただまあ、うんざりするほどの大渋滞を多くの人が経験し、「やっぱり目先の利便性ばかりを求めるといかんなぁ」という認識が一般化するのは結構なことだと思う。
そこで皆さんに呼びかけたい。
以上の趣旨に賛同される方は、ぜひ自家用車に乗ってお盆のシーズンに高速道路を走っていただきたい。その際には、飲料水や非常食などを車内に持ち込み、できれば救急箱やヘルメットなども備えておくことが望ましい。それと、とれほどの地獄を見ても決して自制心を失わず、暴動の煽動・参加は行わないこと。よいこの約束だよ!
なお、私事だが、お盆には鉄道に乗ってコミケに行く予定なので、この運動には参加できません。悪しからず。

*1:ついでに言えば、環境問題をまじめに考えようという気風にも乏しいように思う。あと財政問題も。

*2:これは今思いついた造語。

*3:婉曲表現です。