あいまいな日本の払い戻し

名鉄が7月に発売した記念乗車券に払い戻し不可と表記したのは、利用客の申し出による払い戻しを認めた鉄道営業法に抵触する恐れもあると中部運輸局が指摘し、同社が対応を改め、同月下旬から払い戻しに応じる措置を取っていたことがわかった。

では鉄道営業法をみてみよう。

第十六条  旅客カ乗車前旅行ヲ止メタルトキハ鉄道運輸規程ノ定ムル所ニ依リ運賃ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得

○2 乗車後旅行ヲ中止シタルトキハ運賃ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得ス

次に鉄道運輸規程をみる。

第十四条  旅客ハ改札前旅行ヲ止メタルトキハ乗車券ノ発行当日ニ限リ当該乗車券ヲ返還シテ運賃ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ鉄道ハ相当ノ手数料ヲ請求スルコトヲ得

○2 旅客ハ改札後乗車券相当ノ座席ナキ為旅行ヲ止メタルトキハ遅滞ナク鉄道係員ノ認諾ヲ受ケ当該乗車券ヲ返還シテ運賃ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得

○3 前二項ノ場合ヲ除クノ外旅客ハ旅行ヲ止メタルコトヲ事由トシテ運賃ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得ズ

「乗車券ノ発行当日ニ限リ」というのが気になるが、本題から外れるのでスルー。

記念乗車券は7月11日から発売した「ありがとう(名鉄創業115周年&さようなら7000系引退)記念乗車券」。30日に予定する7000系パノラマカーの最終イベント運行の乗車券を入手する事前申込応募券をセットに発売(応募受け付けは終了済み)。

えらく長ったらしい名前のきっぷだ。だいたい115周年という中途半端な年を記念してどうするのか。

この記念乗車券は、創業「115周年」にちなんで「一ツ木」駅からの大人片道普通乗車券(220円区間)、「西一宮」駅からの大人片道普通乗車券(220円区間)と「五ノ三」駅からの大人片道普通乗車券(710円区間)をセットにして、1,150円で発売するものです。さらに券片の長さも「115周年」にかけて、折りたたみ式の115cmとしています。

無理矢理感が漂う設定だ。どうせなら国鉄115系電車の写真を使ったデザインにすればよかったのに。
それはともかく、ポイントは次だ。

通常の普通乗車券は払い戻しが可能で、購入者から問い合わせを受けた中部運輸局鉄道部は「普通乗車券と言えるかどうかは判断が難しいが、利用客にすれば、普通乗車券ととらえられないこともない」との見解を示し、同社に完全な排除でなく払い戻しを可能にする検討を求めた。

どうした、中部運輸局鉄道部! 普通乗車券なのか、違うのか?
で、結果はこうだ。

7月11日(土)から発売しております「ありがとう(名鉄創業115周年&さようなら7000系引退)記念乗車券」の券面には「払いもどしのお取扱いをいたしません」と記載してあります。

今後、お客さまから払いもどしのご申告をいただいた際には、使用開始前で有効期間内の場合に限り、記念券片と普通乗車券片との切り離しの有無にかかわらず普通乗車券片の枚数に応じた払いもどし手数料を差し引いて払いもどしをいたします。

なんかぎくしゃくした文章だ。前段と後段の逆接関係をぼかしており、払い戻しの取り扱いする理由をまったく書いていない。この文章だけ読んだなら首を傾げたことだろう。
ところで、常識的に考えれば限定7000枚の記念乗車券を払い戻しすることは考えにくい。手数料を引かれてわずかな金銭を得るよりもネットオークションにでも出品したほうがいいのだから。
ここには何か、記事には書かれていない裏事情があるのではないか。
でも、どうせ鉄道ファン絡みの「裏事情」なんか詮索しても仕方がない。真相に驚嘆し、知的好奇心が満たされた充実感を味わうようなことにはならないだろう。これだけでもうおなかいっぱい。
よってこの件はこれでおしまい。