メイド喫茶と美術館

メイド喫茶と美術館はよく似ている。
かつてヨーロッパにおいて美術品は王侯貴族の独占物だった。その後、革命が起こり、美術品は公共財となった。宮殿は美術館となり、今では誰でも自由に美術品を鑑賞できる。
メイドもかつては王侯貴族の館に仕えていて、一般大衆には手の届かない存在だった。だが、今では誰でも数百円出せば「お帰りなさいませ、ご主人様」と言ってもらえる。
もっとも、このアナロジーには一つ難点があるようにみえる。美術館はヨーロッパで発達したが、メイド喫茶は日本独自の産業であり、ヨーロッパの市民革命と直接の因果関係はない。
ただ、喫茶店とはもともとメイド喫茶の契機を含んでいたのではないかとも考えられる。その証拠に、ウェイトレスの衣装はメイド服を模倣したものだ。喫茶店は不完全なメイド喫茶としてヨーロッパで誕生し、今、日本で完全なメイド喫茶に成長しつつあるのかもしれない。