砂砂糖

「砂砂糖」と漢字で書くと「砂」がだぶっているので変な印象を受けるが「すなさとう」と読めば別に違和感はない。「豌豆豆」は変に感じるが「えんどうまめ」だと何とも思わないのと同じことだ。
もともと日本には砂砂糖しかなくて、それを単に「砂糖」と呼んでいた。年に一度、花祭りの日に空から降ってくる甘露が地面の上で固まって砂のようになったものがそれだ。ブドウの形をしたものがブドウ糖で、こんぺいの形をしたものがこんぺい糖だから、砂の形をしたものが砂糖だというのは、ごく自然な話だ。
ヨーロッパやマダガスカル島にある、岩のような形状の砂糖の存在を日本人が知ったのは明治以降のことだ。それまでの命名法に基づくなら「岩糖」とでも呼ぶべきところだが、結晶の大きさが違うだけで従来から知られていた砂糖と同じ物質なので、これら外国産の砂糖もやはり「砂糖」と呼ばれることになった。とはいえ、見かけの上での違いを表す言葉があるほうが便利だ。そこで「砂砂糖」と「岩砂糖」という言葉ができたわけだ。これが大正の中頃のこと。
「砂砂糖」という言葉の成り立ちをよく知らない人々の中には、この言葉がもともと「砂沙糖」だったと勘違いしている人がいる。「沙」が漢字制限に引っかかったため「砂砂糖」という奇妙な表現になってしまったのだと思いこんでしまっているのだ。だが、上の説明でおわかりのとおり、昔から砂糖は「砂糖」と書かれていたのであり、「沙糖」などと書かれた時代はない。憶測でものを言う前に、きちんと文献を調べてもらいたいものだと思う。