一度は行きたい福島空港

後ろ向きな性格のせいか、明るいニュースよりも暗いニュースのほうに心を惹かれる。「極寒」「撤退」「閉店」などといった文字が躍る記事を見ると、なんだかそわそわして、憧憬にも似た奇妙な感覚にとらわれる。
福島空港といえば、去年こんな記事を読んで、なぜか強く印象に残っていた。

 「福島県にとって福島空港は20世紀最大のプロジェクトだった」と話すのは、地元紙福島民報の元幹部で、現在は福島学院大学監事の河田亨さん(77)。同紙面で積極的に「空港必要論」を展開し、当時の知事や県幹部に対しても空港建設の必要性を訴えていったという。

 「福島県は昭和30年代の『1県1空港』という流れに乗ることができなかった。新幹線を優先させてきた時代もあった。でも、空港がない地域は廃れる。県の役人たちは予算をつけようとしないから、われわれが動いた。いわば民間が作った空港だ」

 空港の是非が語られていた当時、同社内でも「福島に空港はいらない」という声があったという。「会長には『空港を作ってどこへ飛ぶんだ』といわれた。大阪や九州…と言うと、今度は『このなかで今年大阪に行った者は手を挙げろ』と。その時手を挙げたのは1人だけでね…」。当時から空港不要論は渦巻いていたと河田さんは明かす。

 だが、それでも必要だと訴え続けた。「福島空港ができたからこそ、立地してきた企業もたくさんある。もし福島空港がなければ、日本の空の地図から福島は存在しなくなる。考えなければならないのは、空港をいかに育てていくかということじゃないのか」

空港に限ったことではないが、大規模プロジェクトには需要の有無とか採算性といった視点以外のものが必要だ。政策的投資という観点が。そのことは全く否定はしない。だが、交通網の整備にはストロー効果をはじめとするさまざまな副作用があるので、政策的にみても投資に値するかどうかが疑問なプロジェクトが多いことも確かだ。福島空港の場合には、幸い(?)目立ったストロー効果はなかったようだけど。
このたびの日航の撤退は福島空港にとって「終わりの始まり」に過ぎないのか、それとも起死回生の挽回のチャンスがあるのか。航空事情には疎いので判断はできないのだが、ウィキペディアを見た限りでは、先行きは怪しいようだ。

  • 利用者は1999年度の757626人をピークに減っている。
  • 東京国際空港羽田空港)便がない空港としては全国5位の旅客がある(2006年度)。
  • 需要予測達成率は38.0%と、日本国内の空港ではワースト4位であり、運用方法・存在意義が問われている(2006年現在)。
  • 2,500m滑走路供用開始からジャンボ機が降り立ったのは、2009年1月までで16回である。

羽田便がない空港としては全国5位の旅客*1、というのは一見凄そうではあるのだが、ここの2006年度データをみると、

空港 旅客合計
成田 66,883,129
中部 11,721,673
仙台 3,387,463
新潟 1,258,003
福島 529,726

となっており、成田・中部の両国際空港とは2桁の差、仙台・新潟というライバル空港と比べても1桁少なくダブルスコア以上の差がついている。何ともかんとも痛ましい限りだ。
そんな福島空港を応援するために、一度は訪れてみたいと思っているのだが、飛行機は便数が少なくて不便だし高くつくので、陸上からの交通アクセスを調べてみた。郡山駅発着のバスがいちばん手頃そうだが、せっかくだから猪苗代駅前・会津若松駅前発着のバスにも乗ってみたい。一度は訪れたいと思いつつなかなか果たせないでいる諸橋近代美術館のついでに行きたいものだ。いつになるかはわからないけれど。

*1:羽田空港には羽田便がないので、それを含めれば福島空港は第6位となる。