干したけのこは意外と食べられていないらしい

自分にとって馴染みのあることは他人にとってもそうだと思い込んでいて、それが否定されたときに大きな衝撃を味わうことがたまにあるのだが、見出しに掲げた干したけのこの件はその中でも超弩級の破壊力で迫ってくるものだった。
ええっ、だって生まれてこの方ずっと、ごく日常的に食べてきた食材なんだよ?!!
干したけのこの作り方は簡単だ。竹藪でたけのこを掘って、皮を剥いて鍋で茹でた後、だいたい節ごとに輪切りにしてから半分に割る*1。でもって、陽当たりのいいところにござか何かを敷いて切ったたけのこを並べて十分に水分が抜けるまで乾かす。このとき、干し足りないと後で黴びることがあるので注意。
たけのこは賞味期限が極めて短い食べ物だが、こうやって干したたけのこは、その後の保存状態がよければ2、3年は十分にもつ。あとは好きなときに水で戻して人参、牛蒡、竹輪、天ぷら*2などと一緒にたく*3だけだ。
たけのこはこれからの季節になると、それこそ雨後のたけのこのようににょきにょきと生えてくるので、とても家庭では消費しきれない。かといって、たけのこを商売にするほど手入れをしていない*4ので売るに売れない。そのまま放置しておくと竹藪が大変なことになるので、掘れるだけ掘っておいて、干したけのこにして保存しておく、というのはごく自然な発想だと思われる。ほかには缶詰・瓶詰の類にして保存するという方法もあるが、これらは生たけのこよりも風味が落ちるので見劣りがする。たけのこのシーズン以外は仕方がないが、缶詰のたけのこを使うこともあるけれど。それに比べると、干したけのこは風味も食感も生たけのことは全くの別物で、決して代用品などではないという優れ物だ*5。ところが、会社の同僚に聞いても、学生時代の旧友に聞いても、ネットで知り合った知人に聞いても、誰一人として干したけのこを知らないと言う。
グーグルで検索すると九州ではわりとよく作られている*6らしいが、それ以外の地方では干したけのこはあまりないようだ。我が家は近畿地方にあるのだが、そういえばスーパーマーケットなどで干したけのこを売っているのを見かけたことがない。ということは、干したけのこの風習はごく局地的に点在しているだけということなのだろうか?
うーん、食文化というのは不思議だ。

*1:もちろん、先に半分に切ってからでも構わない。

*2:小麦粉を衣にして揚げるほうの天ぷらではなくて、魚肉を練って揚げた天ぷらのこと。

*3:関西では「たく」が、関東では「にる」。たくとにる - 一本足の蛸参照。

*4:以前、たけのこ農家の竹藪管理の状況を見せてもらったことがあるが、これは真似ができないと思った。

*5:同様に、たけものの漬け物というものもあるが、竹の種類によって向き不向きがあるのだろう、破竹の漬け物は食べたことがあるが孟宗竹のそれは見たことがない。

*6:いったん茹でたあと塩漬けにしてから干すという製法のところもあるようだ。