赤情報本

熊本県が11年ぶりに改訂し、4月に公表した「レッドデータブックくまもと2009(熊本県の保護上重要な野生動植物)」に誤りが多数見つかった。230万円かけて印刷した300部を回収し、刷り直して7月ごろに再発行することになった。

県によると、執筆者からの指摘で判明、印刷した300部(1部9千円)の販売や県庁内での閲覧を中止した。自然保護課は「締め切りが迫り、確認が間に合わなかった」と釈明し、7月にも改訂版を発行する意向を示した。

1998年に発行された『熊本県における保護上重要な野生動植物−レッドデータブックくまもと−』*1があって、その改訂版に誤りが多数見つかったというのが今回の事件なのだから、「7月にも改訂版を発行する意向」という言い方は不適切ではないか。本に不備があって刷り直ししても「改訂版」とはふつう言わないだろうし、仮にそう言うのだとすれば、改訂版の改訂版で二訂版ということになってしまう。
それにしても、県版レッドデータブックの刷り部数が300部というのは少ない。学術資料として、郷土資料として、そして行政資料として用いられる本なのだから、学術研究機関や図書館、行政機関に配布するだけでも相当数が必要になるはず。現在、熊本県内には47の市町村があり、図書館数は60を超える*2。学術研究機関の数は数え方によって異なるが、平成20年度学校基本調査でみれば、大学10、短期大学2、高等専門学校2、高等学校(全日制・定時制)85、という具合。執筆者への献本や販売用などを含めると300部では不足するように思うが、予算の都合で300部しか刷れなかったのだろうか?
なお、現在、熊本の環境というサイトにくまもとの希少な野生動植物というコーナーがある。これはくまもとの希少な野生動植物 RED DATA BOOK(普及版)だそうだが、内容をみると1998年版でも2009年版でもないようだ。おそらく「レッドリストくまもと2004」のデータをもとにしているものと思われる。このレッドリストについて調べてみると、

現在、掲載されている情報はありません。

と書かれた素っ気ないページに行き着いてしまうが、WARP-国立国会図書館インターネット情報選択的蓄積事業に「熊本県 レッドリスト」と入力して検索すれば今でも閲覧可能だ。興味のある方はぜひどうぞ。

追記(2009/06/25)

このニュースが讀賣でも取り上げられた。

4月下旬、本を受け取った執筆者らの指摘で判明。記述ミスの原因について、県自然保護課は「委員会からの原稿提出が昨年6月の締め切りに間に合わず、編集作業が大幅に遅れた。昨年度の事業のため3月末までに発行しなければならず、原稿を十分にチェックする時間がなかった」と釈明している。本は作り直さず、原稿部分を差し替えるなどして対応する予定。

「本は作り直さず、原稿部分を差し替えるなどして対応する」というのが意味不明。

*1:残念ながら、はまぞうには登録されていなかった。かわりに国立国会図書館の書誌情報にリンクしておく。

*2:熊本県公立図書館一覧 - 熊本県庁及び熊本県の図書館参照。