2冊まとめて一気読み

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! (ファミ通文庫)

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! (ファミ通文庫)

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2 (ファミ通文庫)

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2 (ファミ通文庫)

1巻が出たとき、すぐに買ってあったのだが、ちょうど「小説読みたくない病」が発症した頃だったので、ずっと積んであった。うかうかしているうちに2巻が出てしまい、さてどうしようかと思案したが、いちおう買っておくことにした。既刊未読状態で新刊を買うのは積ん読のもとだが、どうせさんざん積みを重ねているのだから、この上に1冊や2冊積んだところで大した違いはない。
とはいえ、さすがに3巻が出るまで放置したら、もう手を付ける勇気がなくなってしまうだろうと思い、今日、一念発起して1巻から読み始めることにした。
ああ、これは懐かしい。
2000年前後を境として、すっかりゲームの世界から遠ざかってしまったロートルなので、最近のそっち方面の事情はよくわからないのだけど、かつて寝食を忘れて打ち込んだ「同級生2」や、寝食は忘れなかったけれどそれなりに打ち込んだ「ときめきメモリアル」や、タイトルを忘れて思い出せない、攻略不可能なヒロインが「きゃるーん」という口癖のゲームなどが走馬燈のように脳裏を駆けめぐっていった。
としをとって、もはや没入することが能わぬそれらのゲームへの追憶のおかげで、多少は上方補正がかかっているのかもしれないが、それをさっぴいて考えても、物語作りの骨格がしっかりしていて楽しめる作品だと思う。この種の、オタク文化をベースにしたメタフィクショナルな作品は「わかる人にしかわからない小ネタ」を盛り込んで一部マニアに媚を売ることが多くて白けるのだが、この小説にはそういう白々しさは感じられなかった。もしかすると、どこかに実在する既存作品への暗黙の言及があるのかもしれないが、もしそうだとすると、わざとらしくならないようにうまく処理しているのだろう。
1巻できれいに完結しているので続きはどうやって話を進めているのかと思えば、2巻では1巻の設定を活かしつつ、さらに新設定を加えていて感心した。なるほど、この手なら長期シリーズ化が可能だ。
筆力も安定しているし、緩急のバランスの取り方もうまい。これは文句なしに今年ベスト候補作だ。
うん、いい小説を読んだ。