その理屈はおかしい
地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)
- 作者: 久繁哲之介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/07/07
- メディア: 新書
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飲食店とコンビニエンスストアは、ビジネスや観光などの消費で流入する交流人口の多い地域に集中して出店する。そして、その店舗数と交流人口数は比例している。視点を変えると、飲食店の質量をあげて人々の交流を促すことで交流人口をあげることも可能である。それは飲食店・コンビニエンスストア数それぞれ第1位の沖縄県と北海道に見てとれる。沖縄県と北海道は日本を代表する観光地であり、飲食目当ての観光客も多い。
『地域再生の罠』を読むと「いいこと書いてるな」と思うところもあるのだが、ところどころ首を傾げたくなるような論述もある*1。中でも我が目を疑ったのが、209ページに書かれている文章だ。
「交流人口」というのはあいまいでつかみどころがなく、たぶん現段階では信頼できる統計は存在しないと思われるので、飲食店・コンビニエンスストアの店舗数と交流人口数*2の間に比例関係があることを実証することは難しいだろう。ただ、これらの店舗が交流人口の多い地域に出店する傾向があるということは別に法外な主張ではないように思われる。しかし、その逆はどうなのか。「視点を変えると」の一言で因果関係を逆転してしまえるものなのか? もしそれが可能なら、飲食店の「質量をあげる」*3かわりにコンビニを大量出店させることで交流人口を増すことができるという理屈も成り立つのではないか。もちろん、このような想定は馬鹿馬鹿しいことだが。
上に掲げた文章が置かれている第7章には「食のB級グルメ化・ブランド化をスローフードに進化させる」という見出しがつけられている。その見出しが示す著者の主張を根拠づけるために、全国の飲食店・コンビニ店舗数の統計を持ち出したようだが、かなり無理をしすぎているのではないか。
この文章を読むまでは、もうちょっとまじめに感想文を書こうという気になっていたのだが、一気に萎えてしまった。第4章のコンパクトシティ批判など面白かったんですがねぇ。