では、ライトノベルはどうなのか、という話

前回の粗筋

ジャンル小説にはさまざまな異なるパターンの特徴づけの方法がある。では、ライトノベルはどうなのか。

今回の粗筋

ライトノベルには「ライトノベルはこうでなければならない」という規範が稀薄*1であり、また、先行作品との関係性も稀薄*2である。
ライトノベルが、その属性*3において、ゆるやかなまとまりをもつのは確かだが、そのまとまりを「ジャンル」と呼ぶことに抵抗があるのは、上記の事情による。
とはいえ、ライトノベルジャンル小説ではない、とか、「ライトノベル」はジャンルではない、とか言い切るのにも少し躊躇する。「ライトノベル」という呼称により、ある程度の制度的固定化が行われ、批評や分析の対象となりつつあるということは、ライトノベルジャンル小説化を示している。他方、ライトノベルを特徴づける諸属性のうちのいくつかをもたない作品が続々と生み出されている。

結論*4

ライトノベル」は、単なる便宜上の分類からひとつのジャンルへと生成しつつあり、かつ同時に、ひとつのジャンルから諸要素の束へと解体しつつある、稀有な文芸ジャンルである。

*1:全くないというわけではないが、ライトノベルを売るための方法論としての「かくあるべし」と明確に区別されるほどではないように思う。

*2:これも全くないというわけではないが、マンガやアニメ、ゲームなど他ジャンルの作品との関係に比べて、特に際だっているというわけではない。

*3:たとえば、「絵付き小説である」「文庫版である」「登場人物の多くが中高生である」「現実の社会制度に忠実ではない」など。

*4:ただし、今後修正または放棄する可能性がある。