YAとヤングアダルトは違うらしい

ラノベの外に目を向けて中高生及びさらにもうちょっと下の世代向けのエンタメをチェックしてみると、そこにラノベにとは似て非なるけど相当近い、同じくらいおおきくて曖昧なジャンルが広がっていることに気付くでしょう。“YA”ですよ!

大雑把に言うとYAとは、キャラ小説化の進行著しいエンタメ系児童文学と、読者の共感を呼ぶような同世代感覚のある思春期・青春小説とが合流しながら、ここ5年くらいの間に出来上がってきたカテゴリーで、正直YAという呼び方にみんな賛成してくれるのかどうかもちょっとわからんのですけど、しかしとにかくそのようなカテゴリーが存在していることは確かです。

なおYAとはヤングアダルトの略であり、これは英語圏において、児童文学ともその他の一般的な大人向けの小説とも違う、十代向けの小説をあらわす言葉です。しかし日本では“アダルト”と言う単語に悪いイメージしかないため、頭文字をとってYAと呼ばれることが増えてきているようです。

90年代末から00年代はじめごろに、ライトノベルを含む十代向けの小説をヤングアダルトと呼んでいた時期がありましたが、YAはそれとはまたちょっと違う枠組みです。ヤングアダルトは当時ちょっと流行っていた思春期小説を中心にその他のライトノベル“も”含むというよな広くて曖昧な概念だったかと思います。まあそっちのほうが本来のヤングアダルトの意味に近いのでしょうが、いっぽうのYAは現在のライトノベルと同じく、眼に見える具体的なYAレーベルの存在を前提としています。

見出しを見た瞬間には「ん? 『ヤングアダルト』って『ライトノベル』の旧称でしょ?」と思った。この種の小説は「少年小説」→「ジュヴナイル」→「ヤングアダルト」→「ライトノベル」というふうに呼び名が変わってきた*1、という認識があったからだ。だが、上の引用文を読む限りでは、昨今の「YA」はかつての「ヤングアダルト」とは違うものを指しているようだ。
ラノベから見る新ジャンルYAまとめ - ディドルディドル、猫とバイオリンで紹介されているレーベルのいくつかは、ライトノベル化する児童文学 - ゆーずー無碍たる日記*2で紹介されているが、そこでは「児童文学」と総称している。それから2年足らずの間に、児童文学の中でライトノベルに似た傾向をもつ作品群やレーベルが成長して「YA」というサブカテゴリーを形成しつつあるということだろうか。
以前からやや気にかかっている分野ではある*3のだが、まだ断片的にしか読んだことがない。この機会にもうちょっと読んでみようか、とも思うのだが、いろんな小説に気を惹かれてどんどん本を積んでいるので、なかなか手出しできないのが現状だ。うむ、困った。

*1:それぞれの時期にそれぞれの呼称を代表してきたのは別の作品だから、もちろんこれらは完全に同じものを指すわけではない。

*2:このページのタイトルは「四月莫迦のつもりは無く - ゆーずー無碍たる日記」だが、その大部分が「ライトノベル化する児童文学(その1〜4)」なので、わかりやすいようにリンク文字を変更した。

*3:ここでは、ライトノベルと児童文学の関係を美術と工芸の関係に擬えてみたが、思いつきの域を出るものではない。