『銀の犬』の感想(その3)

銀の犬

銀の犬

気が変わったので「光原空間」の話はやめて、第2話「恋を歌うもの」を読んで気にかかったことを書いておく。それは、この話は後半が蛇足のように思われるということだ。
いや、「蛇足」というのは言い過ぎか。第9節以降を切ってしまったら、シリーズキャラクターのオシアンとブランの出番がなくなってしまうのだから。ただ、逆に言えば、この物語を『銀の犬』の連作に強いて組み込む必要もなかったのではないか。この連作の基本的な構図は「謎−解決」と「苦難−救済」の重ね合わせだが、「恋を歌うもの」の場合は作中で与えられる救済がいかにも安直で薄っぺらい。
悲劇は悲劇のまま、そっと幕を下ろすほうがいいこともある。
いやまあ、悲劇を悲劇のまま終わらせないのが、光原作品の特徴ではあるのだが……。