アンドロイドはオデット姫の夢を見るか?

カラクリオデット 第1巻 (花とゆめCOMICS)

カラクリオデット 第1巻 (花とゆめCOMICS)

昔は少女マンガを浴びるように読んでいたものだが、10年くらい前からほとんど読まなくなった。それまで少女マンガをよく読んでいた知人が何人もいて、お互いに情報交換して面白いマンガを選び取っていたのだが、その知人たちのうちの何人かは少女マンガから離れ、何人かは少女マンガの話題を出さなくなり、何人かは音信不通となっていき、情報が手に入らなくなったからだ。自分自身の「少女マンガセンサー」はその何年も前に錆びついてしまっていたので、自力で発掘することもできなかった。
では、なんでこの本を手に取ったかというと、かつて少女マンガをよく読んでいた知人のうちの一人が薦めてくれたからだ。その知人も今ではあまり少女マンガを読んでいないはずだが、聞けば「作者名に惹かれて」衝動買いしたのだという。
鈴木ジュリエッタ
確かに変な名前だ。マンガ家には奇を衒った名前の人が多いので、特段奇妙奇天烈ということもないのだが、少なくとも近所にはこんな名前の人はいない。確定申告のとき、税務署の係員に笑われても仕方がないだろう。この人はデビュー前に「サルまん」を読まなかったのだろうか。いや、最近デビューした人なら「サルまん」を知らなくても不思議はないか。かなり若そうな人みたいだし。
前置きが長くなった。
このマンガのタイトルのうち「オデット」は主人公の名前だ。主人公のオデットはアンドロイドなので、「カラクリ」というのはそれを指しているのだろう。何となく西尾維新っぽいタイトルだが、作品そのものには特に影響は見受けられない。
以下、カバー裏折り返し部分の「作品かいせつ」を引用する。

天才科学者・吉沢博士に創られたアンドロイド・オデットは、見た目は普通の女の子。自分と人間との違いが知りたくて、高校に通い始めます。そこで様々な人と触れ合い、友達も出来たオデットは普通の人間と同じようになりたくて、吉沢博士に体の改造を要求するのですが…!?
まあ、そういうお話だ。
今の「花とゆめ」にどんなマンガが載っているのかは知らないが、20年くらい前はちょっと知的でSF的センスのあるコメディや人情話が結構多く、脳内お花畑マンガやレディコミ予備軍育成マンガなどとは一線を画していた。その系譜が今でも続いていることにちょっとした感慨のようなものを感じた。
初めて読むのに、なんだか懐かしいマンガ。かつて少女マンガを愛読した人にも、そのような経験のない人にも安心してお薦めできる。個人的に特に気に入ったのは143ページの「私ネコ大好き*1」あたりのエピソードだ。なぜ気に入ったのか、その理由はここには書けない。百聞は一見に如かず。ぜひ御自分の目で確かめていただきたい。

*1:ハートマークつき