日々折々

向こう町ガール八景

向こう町ガール八景

知人に鶴屋というハンドルの人がいる。この名前を書くだけで誤爆的アクセスがくるので厄介なのだが、他人の名前なのでどうしようもない。以前その話を本人にしたら、「じゃあ今度から名前を『亀屋』に変えます」と言っていたが、すぐに忘れてしまったようだ。昨日鶴屋氏から来たメールの件名は「鶴屋です。にょろーん」だった。そのうち「めがっさ」とか言い出すのではないだろうか。
それはさておき、この鶴屋氏は非常によくマンガを読んでいる人だ。それも、ちょっとマイナーなマンガを好んで読む。大きな書店のマンガコーナーでよく「サブカル」などとカテゴライズされている系統だ。この種のマンガにはとんと縁がないのだが、たまには別世界を覗き見てみるのもいいので、鶴屋氏にお薦めのマンガを選んで貰った。そのうちの一冊が『向こう町ガール八景』だ。
作者については何も知らない。オビには『アックス』『コミックH』誌発表された作品を収録、と書かれているが、どちらも手に取ったことすらない。おまけに版元は青林工藝舎だ。
「う〜ん、青林工藝舎か……」
「いや、これ全然青林工藝舎っぽくないからっ! 大丈夫だからっ!」
いや、どういうマンガが青林工藝舎っぽいのかということさえ、実はあまりよく知らないのだが、鶴屋氏が「大丈夫」と断言するのだから面白いのだろうと思い、鶴屋氏を信用して購入することにした。
ここでちょっと私信。あー、鶴屋さん鶴屋さん、あなたを信用して貸した5000円、来月耳と尻尾を揃えて返してください。返さないとひどいんだからねっ!
私信おわり。
さて、『向こう町ガール八景』を通読してみると、読む前に何となくイメージしていたような前衛マンガではなくて、収録作8篇はすべてごくふつうのストーリーマンガだった。ただ、やっぱりメジャー系のマンガとは違った独特の雰囲気がある。これ、何といえばいいんだろうか。似たマンガがありそうでなさそうで、何とも表現しにくか。強いていえば、松本剛とか……いや、違うな。
絵柄もストーリーも淡泊で、刺戟を求める人には物足りないかもしれないが、日常生活のちょっとした会話や、そのときどきの人物の表情など、よく読めば味わいが深い。値段が少し高め*1なので「これ、ちょっと面白いから読んでみたら」と気軽に薦めにくい本ではあるのだが、お金に余裕がある人は試しに買ってみてもいいだろう。

*1:税抜きで1000円。