「違和感を感じる」表現

 中で一番気にかかったのは、『違和感を感じた』という一文。
 僕自身は、かまわないと思っている表現なのだけど、こうしたものに違和感を覚える人がいるということも理解している。とても悩ましい。
 僕の個人的感覚の中では、「違和感を覚える」と「違和感を感じる」には明確な差がある。言葉に換言するのは難しいのだけど、前者が大で後者が小というか、前者が実で後者が虚というか、何かそんな感じ。
 なので、そのまま『違和感を覚えた』に直すわけにはいかない。そうすると、僕の中に違和感が残る。

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「違和感を感じる」以上に「言葉に換言する」のほうが気になるのだが、それはさておき。
「違和感を感じる」は、字面をみただけで「感」がダブっていてぎこちない。これが「屈辱感を感じる」ならさっさと「感」をひとつ削って「屈辱を感じる」に直すところだが、「違和を感じる」だとピンとこない。というのは、「感」抜きの「違和」という言葉はふだんあまり見聞きしないので、無理矢理馴染みのない言葉を持ち出したようで、ひっかかるからだ。
「違和感」をそのまま残して述語を置き換えるとすれば「違和感を覚える」がいちばんだが、「感じる」と「覚える」は同じではない。引用した文章で述べられているように、明確な差があるとは思わないが、いつでも言い換えができるわけではないだろう。時と場合によってはぎくしゃくする。
もう一ついえば、「覚える」と漢字仮名交じりで表記すると、少し語気が強くなりすぎるようで、ためらってしまう。別に違和感を記憶するわけじゃない。不定形で言語化されていないものが意識に現前しているのだ。全部ひらがなで「おぼえる」と書きたい。「覚える」より「おぼえる」のほうが漠然としておぼろげな感じが出る。
とはいえ、常に「違和感をおぼえる」と書き続けるという硬直化した方針にも抵抗がある。「この言葉はいつでも漢字、この言葉はいつでも仮名」と決めてかかるのではなくて、文章全体の漢字と平仮名の配分次第で適宜使い分けるほうがいい。
一時期、「違和感をおぼえる」とは別の表現を工夫して「違和感が浮かぶ」という言い回しを用いてみたこともあった。が、これもあまりしっくりこないので、じきにやめてしまった。ほかには「違和感を味わう」とか「違和感を噛み締める」とか、いろいろ試してみたのだが、ここまでくると完全に別物だ。
結局、今のところ「違和感を感じる」を言い換えるのにぴったりの言葉はまだ見つかっていない。この文章では「気になる」「ぎこちない」「ピンとこない」「ひっかかる」「ぎくしゃくする」「ためらってしまう」「抵抗がある」「しっくりこない」などを用いてみましたが、違和感を感じることなく読めたでしょうか?