大きな扉の中と外

扉の外 (電撃文庫)

扉の外 (電撃文庫)

3月は最低10冊読みたいと言ってから半月経った。その間にもどんどん読書意欲が減退して、どうやら目標達成は困難になりつつある。
そんな最中に読んだのが『扉の外』だ。これを読む気になったのは、平和の温故知新@はてな - 電撃文庫「扉の外」の評価が両極端の影響だ。みんながこぞって大絶讃する本より、賛否両論真っ二つの本のほうに興味を惹かれるからだ。実を言えば、読んだ人すべてが酷評する本のほうが、もっと興味を惹かれるのだが、そんな本を読むのは心身ともに健康で余裕があるときに限る。読書意欲が低下しているときには避けたいものだ。
で、読後感を一言でいえば、面白かった。二言でいえば、すごく面白かった。三言でいえば、すごく、とっても面白かった。
あちこちの感想文を読むと、言いたいことはあらかた言い尽くされているような気もするが、一つだけ付け加えておこう。
この作品は、状況設定の派手さのわりに陳腐なサスペンス小説に堕すことなく、一定の緊張を孕みながら淡々と出来事を語っていくという、奇妙なアンバランスさが大きな魅力となっている。かつてこれと似た雰囲気をもった小説を読んだことがあるのを思い出した。それは、『消えた娘 (新潮文庫)』という小説だ。たぶん今は新刊書店では入手できないと思うが、古本屋で見つけた人はぜひ読み比べてみてほしい。
ここ数年の間に電撃文庫からデビューした作家のなかで、御影瑛路佐竹彬杉井光の3人は、新刊が出れば必ず買うことに決めている*1のだが、どうやら土橋真二郎の本も買い続けることにりそうだ。電撃文庫、恐るべし!

*1:このほか、特に決めているわけではないが、何となく全作買っている作家も何人かいる。