「一般文芸」とは?

仮に一般文芸が文学とエンターテイメントによって構成され、エンターテイメントのなかにミステリやSFといった様々なジャンルがあるとすれば、ライトノベルはこの一般文芸の縮図ではないかと、思いました。

リンク先の本題とは関係ないのだが、いま引用した箇所での「一般文芸」という言葉の用法が気になったので、ちょっと書いておこう。
同じ「一般文芸」という言葉を使っていても、ミステリ読みとラノベ読みとではその適用範囲に違いがあるということに気づいたのは数年前のことだ。ミステリ読みにとって「一般文芸」とは、ミステリとかSFとかファンタジーとかホラーとかのような特定のジャンルに属さない小説を指す。ラノベ読みにとっては、ライトノベルでない小説なら、ミステリでもSFでもファンタジーでもホラーでも皆「一般文芸」に含まれる。では、ミステリ読みとラノベ読みは「一般文芸」という言葉を別の意味で用いているということになるのかといえばさにあらず。それぞれの関心が向けられた特定の分野の小説以外の文芸作品を「一般文芸」と呼んでいるだけなのだ。今とっさに用例は挙げられないが、きっと官能小説読みにとっての「一般文芸」にはミステリもライトノベルも含まれることだろう。
さて、上に引用した文中での「一般文芸」はそれとは違っている。対置されるべき「特殊文芸」が不在なのだ*1。ここでの「一般」は「特殊」の対義語ではなくて、「全般」の類義語だろう。要するに「文芸一般」ということだ。
ただ、「文芸一般」という意味で「一般文芸」という言葉を用いている人をほかに知らないので、果たして「一般文芸」という言葉にそのような用法があるのかどうか、ちょっと疑問がある。別のところ*2で秋山氏は

 どうも一般文芸という言葉が誤解されているように思います。

 ざっくり言ってしまうと、一般文芸というのは出版社や書店で使われる言葉で、小説とほぼ同じ意味を持ちます。したがって、純文学も中間小説も大衆小説(=エンターテイメント)も一般文芸の内側にあります。もちろん、エンターテイメントに含まれるライトノベルも一般文芸の内側にあります。

 本という大きな枠組みがあって、そのなかに雑誌や漫画があるように一般文芸があるのです。

とはっきり断言しているのだが、出版社や書店では本当に「一般文芸」を「小説」とほぼ同じ意味で用いているのだろうか? 識者のご意見を伺いたい。

*1:強引に対比させるとすれば、戯曲や詩歌を挙げることができるかもしれないが、秋山氏の関心がそのようなものに向けられているわけではないのは明らかだ。

*2:これはリアルタイムで読んでいるはずだが、その時にはなぜか全然気にならずに読み流していた。図解もスルーしている。