同じ漢字が重なる感じ

「合目的的」という言葉を初めてみたとき、「変な字面だなぁ」と思った。今でもそう思う。
まず「目的」という言葉があって、目的に合っているということを「合目的」という。さらに目的に合っているように、とか、目的に合っているっぽい、とか、とにかく「なんとか的」という時に言おうとするような意味をこめて、「合目的的」となる。そう考えると何の不思議もないわけだけど。
同じように、漢字がだぶっている言葉に「女性性」や「男性性」がある。元の言葉に「なんとか性」という時に言おうとするような意味をこめるために「性」を足したものだ。でも考えてみれば、最初に「女」とか「男」とか、ちゃんと意味の通る言葉があるのだから、そこに「なんとか性」をつけたら、単に「女性」「男性」でいいんじゃないか。それが、最初の「女」「男」にあまり意味のない「性」をつけてしまったために、さらに「なんとか性」を足して「性」が重なるという不合理な結果を招いてしまった。今さら「女性」「男性」を「女性性」「男性性」の意味を使うように言葉遣いのしきたりをかえるわけにもいかないので、もうどうしようもないことだけど。
ところで、その昔、香住春吾という人がいた。この人はいくつもの映画の原作を手がけた作家で、ミステリファンの間では関西探偵作家クラブに所属した探偵作家としてよく知られている*1が、もとは「香住春作」という名前で活動していた。しかし、香住春作の作った作品のクレジットが「香住春作・作」となり「作」が重なるのを避けて改名したのだという。
下の名前の最後の一字に「作」がつき、のちに改名した人といえば、山田耕筰が有名だが、こちらは別に「山田耕作・作」を避けるのが目的だったわけではない。面白いエピソードがあるのだが、時間がないので紹介するのは省略。かわりに、山田耕筰 - Wikipediaにリンクしておく。
アンソロジストや編曲家などで、名前の最後が「編」の人がいたら、やっぱりダブりが生じることになるが、そんな実例があるのかどうか、あったとしてそれを理由に改名した人がいるのかどうかは知らない。というか、「編」が入った名前すら知らない。
どんどん話が逸れていったところで、この件はおしまい。オチはありません。

追記(2008/02/29)

はてなブックマーク - 同じ漢字が重なる感じ - 一本足の蛸から。

2008年02月28日 pbh 日本語
「男」「女」はオブジェクトで「男性」「女性」はその属性の総称と思うので、『あまり意味のない「性」をつけて』って事は無いと思うんだけど、確かに「男性性」やら「合目的的」見たいな繰り返し漢字は不思議な字面

少し補足。

「……は女である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が真であるならば、「……は女性である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も真となる。たとえば、「バロネス・オルツィは女である」が真であるならば、「バロネス・オルツィは女性である」も真となる。
逆に、「……は女性である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が真であるならば、「……は女である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も真となる。たとえば、「西太后は女性である」が真であるならば、「西太后は女である」も真となる。
また、「……は女である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が偽であるならば、「……は女性である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も偽となる。たとえば、「赤沼三郎は女である」が偽であるならば、「赤沼三郎は女性である」も偽となる。
逆に、「……は女性である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が真であるならば、「……は女である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も真となる。たとえば、「ナーガールジュナは女性である」が偽ならば、「ナーガールジュナは女である」も偽となる。
「……は男である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が真であるならば、「……は男性である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も真となる。たとえば、「徳川家康は男である」が真であるならば、「徳川家康は男性である」も真となる。
逆に、「……は男性である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が真であるならば、「……は男である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も真となる。たとえば、「古龍は男性である」が真であるならば、「古龍は男である」も真となる。
また、「……は男である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が偽であるならば、「……は男性である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も偽となる。たとえば、「紫式部は男である」が偽であるならば、「紫式部は男性である」も偽となる。
逆に、「……は男性である」の「……」のところに適当な名前を入れて完成させた文が偽であるならば、「……は男である」の「……」のところに同じ名前を入れて完成させた文も偽となる。たとえば、「クレオパトラは男性である」が偽であるならば、「クレオパトラは男性である」も偽となる。
というわけで、このような文では「女」と「女性」、「男」と「男性」はそれぞれ文の真偽を変えることなく交換可能である。上で「あまり意味のない「性」」という言い方をした時、念頭にあったのはこのことだった。

*1:より正確にいえば、関西探偵作家クラブに興味があるようなミステリファンの間では知られている。