花粉症とじゃばらと「日本食品学会」

今年も花粉症の季節がやってきた。あちこちでマスクをつけた人の姿を見かける。
その、花粉症に効くといううわさのある「じゃばら」をご存じだろうか?

じゃばらとは、ユズやダイダイ、カボスの仲間の柑橘類。ユズよりも果汁が豊富で、ユズやスダチとは違った風味があり、糖度と酸度のバランスのとれた、まろやかな風味が特徴です。「邪(気)をはらう」ところからこの名前がつけられており、村では昔から正月料理にかかせないものでした。他地方で栽培されていないこともあり、じゃばらは「幻の果実」と呼ばれ、最近は花粉症にも効くといううわさも広まり、現在最も注目されている果実です。

北山村和歌山県東牟婁郡に属するが、周囲を三重県奈良県に囲まれた、日本で唯一の飛び地の村として知られる。隣には下北山村があり、そのまた隣には上北山村があるが、どちらも奈良県吉野郡に属している。なんで北山村だけ和歌山県なのかということについては諸説あるようだが、詳しいことは知らない。
「じゃばら」は、その北山村の特産品で、上の引用文も北山村公式サイトに掲載されているものだが、はっきりと花粉症に効果があるとは書かれていないので、ちょっと頼りない。別のページをみると

複数のお客様から「じゃばらが花粉症に効く」という声を頂き、もし本当に 花粉症に効くならと考え、13年2月にインターネットで花粉症の方1000人のモニターを募っ て、100%果汁300mlを試飲していただいたところ、46%の方から効果があったというアン ケート結果が出ました。 その噂はインターネット上で広がり、薬に頼らざるをえない状況の花粉症や鼻炎で苦しん でいる方たちにとって朗報となりました。 専門機関において、医学的見地からアレルギー疾患など他の効用についても委託研究 を進めています。

と書かれているが、このページに掲載されている情報をみると平成15年2月11日に「おもいっきりテレビ」で紹介されたのが最新のようで、どうやら5年くらい手入れをしていないようにみえる。専門機関の委託研究の結果はどうだったのだろう?
そこで、いろいろ調べてみると、こんな記事が見つかった。

花粉対策は『じゃばら』で決まり! 『じゃばら』は和歌山県北山村の特産品で天然素材の花粉対策商品として注目され、年々注目度が高まっています。『じゃばら』とは、ユズやカボスのような酸っぱい柑橘です。「蛇腹」といわれることが多いのですが、「邪気を払う」から名づけられたといわれる縁起のよい柑橘です。 平成13年、14年に行った花粉症効用調査では合計で6割近くの方から効果があったとのご回答をいただいております。平成15年、17年には和歌山県工業技術センターより、『じゃばら』がアレルギーの原因となる、脱顆粒現象の抑制を期待できることが日本食品学会において発表されています。

では、早速、日本食品学会のサイトをみてみよう……と思ったが日本食品学会 - Google 検索では「日本食品○○学会」ばかりがヒットして、肝腎の日本食品学会が出てこない。では、"日本食品学会" - Google 検索だと……んー、じゃばら関係の記事が圧倒的に多く、その中にちらほら別の記事が混じっているという感じだ。上で引用した文章もその他の文章も、どうやら共通の原型*1から「日本食品学会」という言葉をひっぱってきているようだ。
もうちょっと調べてみると、ここここでは「日本食科学学会」となっている。大会の回数まで書いてあるのだから、こちらのほうがより原型に近い文章なのだろうと思うが、でも「日本食品科学学会」という名称の学会もやはり存在しないようだ。似たような学会に日本食品科学工学会日本食品化学学会があるが、平成15年に第50回大会、平成17年に第52回大会がそれぞれ開催されたのは日本食品科学工学会のほうだ。第50回大会のプログラムをみると、「ジャバラの脱顆粒抑制作用」という講演が行われているから、間違いない。
たぶん「日本食品科学工学会」から「工」が脱落し、「日本食品科学学会」となり、さらに「科学」が脱落して「日本食品学会」となったのだろう。
さて、この「ジャバラの脱顆粒抑制作用」は、ここによれば、「日本食品科学工学会第50回大会講演集」に掲載されているらしい。それと同じかどうかはわからないが同タイトルのPDF文書を見つけることができた。和歌山県工業技術センター刊行物に掲載された文章のようだ。また、同じくPDFファイルでカンキツ果実の脱顆粒抑制作用の探索という文書も掲載されている。結局、じゃばらが花粉症に効くという決め手を得るところまでは至っていないようだが、「といううわさ」よりは前進しているようだ。
以上、いろいろ調べたことをだらだらと書き連ねたが、ポイントはこうだ。
劣化コピー、おそるべし!
いや、まさかこんなオチになるとは思ってもいなかった。

*1:平成15年の学会発表のみに言及しているものと、平成15年、17年の学会発表の両方に言及しているものがあるので、原型は2パターンあるものと推察できる。