漫画家は「労働者」ではないらしい

  • 労働基準法第九条では「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義される。
  • 労働契約法第二条では「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義される。
  • 労働組合法第三条では「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義される。
  • 最低賃金法第二条第一項及び家内労働法第二条第六項では「労働基準法第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)」と定義される。

労働法のことはよくわからない*1のだが、いろいろ調べてみると、法律上の「労働者」というのは字面通り「労働する者」一般を指すのではなく、正社員や契約社員派遣社員などを指すらしい。農林漁家や自営業者などは「労働者」には含まれないようだ。
で、この法律上の「労働者」に含まれない人々の中に漫画家がいる。ある出版社でデビューし、その出版社の仕事のみを受けて生活をし、あたかもその出版社の編集者の部下であるかのように命令・指示を受ける立場にあったとしても、労働法は漫画家を守ってくれはしないのだ。
あれ? なんか似たような話があったような……。
あっ、偽装請負だ!*2

追記

例の一件のまとめサイトから辿っていくうちに、あつじ屋日記 漫画家と出版社の問題・小考に行き着いた。漫画家と出版社の間には労働基準法の適用がないということをはっきりと示している。
また、今回の漫画家騒動の原因を解く鍵を「吼えろペン」に見つけたよ - 煩悩是道場では「会社人」という言葉を使って、この問題をわかりやすく説明している。
ところで、本題から外れるが、労働基準法というのは変な法律だ。本文冒頭で引用したウィキペディアの記述からもわかることだが、他の法律で「労働者」を第2条か第3条で定義しているのに対して、この法律では第9条まで定義が出てこない。また、第9条で定義されるのは「労働者」だけで、第10条で「使用者」を、第11条で「賃金」を、第12条で「平均賃金」を、それぞれ別に定義しているのも変わっている*3

*1:できれば専門家の意見をききたい。→コメント欄参照。

*2:もちろん違っている点もある。たとえば、偽装請負には人材派遣会社が介在するが、通常、漫画家と出版社の間にはそのようなものはない。

*3:ふつうはひとつの条の各項か各号でまとめて定義する。