ばけらった!

ばけらの! (GA文庫)

ばけらの! (GA文庫)

少し出遅れてしまったが、今日、『ばけらの!』を買ってきた*1。地元の書店では見つからず、大阪の某マンガ専門店で入手した。やー、田舎は配本が遅くていかんねぇ。
大阪の別の書店に行くと、ラノベ新刊の平台の『狼と香辛料IX』の隣に『ばけらの!』が並べられていた。それを見て、ふともし『ばけらの!』のタイトルが『狼と香辛料×』で絵師が文倉十だったなら、『20世紀少年探偵団』程度には売れたのではないか*2というようなことを思った。
てな話はさておき、待望の杉井光の新刊なので他の本はさておいて最優先で読もうと思っていたのだが、今『“文学少女” と神に臨む作家 下』を読んでいる最中で、ちょうど佳境に入ったところなので、まずはこっちを先に片付けてしまいたい。というわけで、まだ『ばけらの!』のほうは読んでいない。で、当然、感想文も書けないのだが、せっかく『ばけらの!』を取り上げたのだから、この機会に『ばけらの!』はライトノベル界衰退の兆しなのか、 - 星ぼしの荒野からについてコメントしておく。
『ばけらの!』の設定が公表されたときに、すぐに連想したのが、鮎川哲也の『死者を笞打て』*3平井和正の「星新一の内的宇宙(インナー・スペース)」*4だった。「ばけらの!」お試し版を読んだ時の印象では、設定は前者に近く、雰囲気は後者に似ているような気がする。もっとも、星新一繋がり*5で、「『ばけらの!』は盗作だ!」などと騒ぐつもりはない。ここで言いたいのはただ一つ、『死者を笞打て』以降の推理小説も、「星新一の内的宇宙(インナー・スペース)」以降のSFも、浮き沈みこそあれ、決して衰退しているわけではない、ということだ。ライトノベルだって浮き沈みはあるだろうが、まあ右肩下がりの衰退にはならないんじゃないか、と思う。

*1:今回の見出しは「『ばけらの!』を買ってきた」という意味の省略語である。このように一語で表すことにより、『ばけらの!』への存在論的コミットメントなしに語ることが可能になるのだ……というのは嘘。ところで、全然関係はないが、建築設計事務所バケラッタというサイトを見つけた。何かのシャレかと思ったら、本当の建築設計事務所らしい。

*2:ただし、この本が実際にどのくらい売れているのかは知らない。

*3:占魚亭鮎川哲也作品リストによれば、この作品は1964年に「宝石」で連載されたが中絶し、翌1965年に講談社から出版された。1993年の講談社文庫版が現段階での最終刊行のようで、今はたぶん新刊書店では売っていないが、電子書店パピレスで入手可能

*4:ヒライストライブラリー平井和正作品目録によれば、この作品は1970年に「SFマガジン」に掲載され、その後『エスパーお蘭』『悪徳学園』などに収録されている。こちらも現在新刊書店で入手するのは困難だと思われるが、e文庫で読むことができる

*5:星新一の娘さんが漫画「イキガミ」の盗作問題について筒井康隆に相談:アルファルファモザイク参照。なお、「星新一の内的宇宙(インナー・スペース)」はタイトルからも星新一が登場するということがわかるが、『死者を笞打て』にも保瀬新一または星野新一(版によって名前が違う)という名前で登場する。