まるでアール・ブリュットのような

世界最大の虫食い算 (文春新書)

世界最大の虫食い算 (文春新書)

この本を読んで、「最近どこかで似たようなエピソードを見聞きしたなぁ」と思い、記憶を辿ってみたところ、滋賀県立近代美術館で今秋開催されたアール・ブリュット −パリ、abcdコレクションより−の会場で上映されていた作家紹介映像だった。今となっては作家名も覚えていないが、物凄く記憶力の優れた人がカレンダーや日付に非常に関心を持ち、カレンダーをモチーフにした作品を作ったり、日付と曜日の暗合について語ったりする光景を記録した映像だった。この展覧会を見た人で、『世界最大の虫食い算』を読んだ人なら、きっと「うん、似てる」と同意してくれることだろう。まあ、そんな人はほとんどいないと思うが。
さて、『世界最大の虫食い算』は、高校時代に『推理学校虫食い算大会*1に出会った安福良直氏が虫食い算の魅力にとりつかれ、とうとう20000桁の虫食い算を作成するに至った経緯の記録だ。その「世界最大の虫食い算」は非常に大きく嵩張るため、この本のオビに写真が掲載されているのみで、残念ながら問題そのものは掲載されていないるしかし、巻末に31ページにわたってこたえが掲げられているので、そこから問題を復元しようと思えばできないことはない。興味のある人は挑戦してみるといいだろう。
安福氏は「世界最大の虫食い算」作成後、「パズル通信ニコリ」に送りつけ、その後、ニコリに入社して、今や「パズル通信ニコリ」の編集長を務めているという。一冊の本が一人の人間の人生を決定づけたことになる。一方、安福氏と同じく高校時代に『推理学校虫食い算大会』を手に取った安眠某という人物は「わっ、著者が佐野昌一で序文を書いてるのが林髞だ。すごいすごい」と、どうでもいいことに感心しただけで、虫食い算を一問も解いてみようとはしなかった。お粗末様。
ちなみに、『推理学校虫食い算大会』に序文を寄せた林髞は、今はなきカッパ・ブックスのベストセラー『頭の体操』*2のカバー折り返しの推薦文も書いている。それを知った時には「なぜこの人がこんなところで……?」と疑問に思ったのだが、調べてみると林髞自身もカッパ・ブックスから『頭のよくなる本』という本を出してベストセラーになっていたので、その辺りに繋がりがあったのだろう。
さらに脱線するが、木々高太郎 - Wikipedia経由で頭脳パン - Wikipediaという愉快な記事を見つけた。すごいすごい。

*1:リンク先データは1977年の改装版。安福良直氏が手に取った本がこの版かどうかはわからないが、たぶん1983年当時この版がもっとも入手しやすかっただろう。なお、この本のヴァージョンについてはWhat is Mushikuizan Taikai?を参照のこと。

*2:たぶん第1集だったと思う。