教育委員会の事務の補助執行

千代田区立図書館の運営については指定管理者に関する条項等がある千代田区立図書館条例(千代田区:条例第17号)や千代田区立図書館条例施行規則(千代田区教育委員会教育委員会規則第19号)で定められていて,文言上は明らかに教育委員会が所管です。

ところが,図書館の運営に関して区議会で質問があったときに,教育長ではなく,首長部局の職員が答弁に立っているんですが。それすらも"補助"執行のうちなんでしょうかね。

千代田区教育委員会の権限に属する事務の委任等に関する規則をみると、第3条に千代田区教育委員会事務局文書専決規則の読み替えに関する規定がある。これは決裁に関する規定なので議会での答弁に直ちに適用されるものではないが、実際問題として教育委員会事務局には区長部局に"投げてしまった"事務を担当する部長も課長もいないのだから、本来、教育委員会事務局の部長が答弁すべきこと*1は、代わりに区長部局の部長が答弁することになるだろうし、本来、教育委員会事務局の課長が答弁すべきこと*2は、代わりに区長部局の課長が答弁する、というふうに、決裁のときの読み替え規定と同様に対応することになるのだろうと思う。
千代田区の図書館行政の根幹に関わることで、議員が特に教育長を名指して答弁を求めた場合には、当然、教育長自らが答弁することになる*3だろうが、そうでなければ、部長クラスの答弁で足りるので区長部局の区民生活部長が答弁するという仕分けになっているのではないか。事務を担任していない教育委員会事務局のこども・教育部長が議会答弁のときだけ出てくるというのは変なので、これはこれで仕方がない。
ところで、今、千代田区例規集を見ていたら、区長部局と教育委員会事務局の事務をえらく大胆に仕切り直ししていることがわかった。前掲の千代田区教育委員会の権限に属する事務の委任等に関する規則千代田区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例により、スポーツ行政や文化行政、社会教育行政はほとんど全部、教育委員会事務局の手を離れている一方で、区長の権限に属する事務の委任等に関する規則で、学校関係の財務のほか、子育て、青少年、保育園、私立学校などの事務を教育委員会事務局で受け持つことになっている。要するに「子供と学校関係はみんな教育委員会事務局、それ以外の行政分野はみんな区長部局」という分け方で、わかりやすいといえばわかりやすいのだが、学校基本調査関係の事務まで教育委員会事務局に委任しているのは驚いた。根拠法は地方自治法第180条の2だが、学校基本調査は統計法第3条第1項に基づく指定統計調査なので、「この法律によつてこれを行うものとし、他の法律の規定を適用しないものとする」のだから、地方自治法の適用もなく、従って区長の事務を教育委員会に委任することはできない、と解したいのだが……。
もっとも、これには罰則はないし、特に問題が起こって騒ぎ立てる人がいなければ、やったもの勝ちという面もあるかもしれない。また、もともと学校基本調査を首長の事務にしたこと自体に無理があった*4のかもしれないが。

*1:たぶん本会議の大部分の答弁は部長が行っているのだろうと思う。

*2:たぶん、委員会の大部分の答弁は課長が行っているのだろうと思う。

*3:さすがに、教育長の代わりに副区長が答弁するというのはおかしいので。

*4:制定当時の統計法は教育委員会が指定統計調査に関わることを想定していなかった。統計法改正後に開始された社会教育調査は教育委員会の事務とされているが、学校基本調査は首長の事務のまま半世紀の間放置されていたという経緯がある。今年4月からの新統計法のもとでは学校基本調査の実施方法も変わるのかもしれないが、文部科学省の学校基本調査のページにはまだ今年の調査のことが掲載されていないので、詳しいことはわからない。