『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』はエロゲー業界への「トロイの木馬」になりかねない

追記の追記*1

予想はしていたが、早くも一部で本文の趣旨を誤読していると思われるコメントが見られる。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』がなぜ「まずい」か、本文でちゃんと書いたつもりなのだけれど。
とりあえず、1点だけ強調しておく。この文章は、物語において現実には違法ないし不道徳な行為だとされている事柄を取り扱うことについて「まずい」と主張しているのではない*2。そのことを踏まえて、以下の文章をお読みください。

本文

俺の妹がこんなに可愛いわけがない』では、これまでも18歳未満の京介や桐乃がエロゲーをプレイするシーンが何度か出てきたが、4巻ではとうとう京介がショップにエロゲーを買いに行くシーンが書かれてしまった。
これ、まずいよなぁ。
電撃文庫編集部内で止められなかった*3のかなぁ。
かの沙織事件*4以来、エロゲー業界は常に薄氷の上を歩んできたが、レイプレイ事件をきっかけに事態は確実にエロゲー業界にとって厳しい方向に進みつつある。そんなことは『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』制作者たちももちろん知っているはずだが、その時期になぜこのような内容の本を出したのか、少々理解に苦しむ。自業界のことではないから気にしていなかったのか、何も考えていなかったのか。それとも、「心配のしすぎではないかなあに、かえって免疫力がつく」とでも思っていたのだろうか?
俺の妹がこんなに可愛いわけがない』はヒット作になってしまった。マンガ化もした。いずれはアニメ化もするだろう。もはや一部のオタクの読み物ではない。この物語に触れるすべての人が現実とフィクションは別物だと割り切り、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と現実世界のエロゲーメーカーやエロゲーショップを結びつけて考えることは決してない、とは到底思われない。賽は投げられた。あとは確率の問題だ。
やがて突風が吹き荒れるのではないか。その時、「風の息づかいを感じていれば、事前に気配があったはずだ」と言ったら、「一発だけなら誤射かもしれない」と応じるのだろうか。それとも「これも小泉失政のツケか」とでも?

関連する過去の記事
冬の時代は近い - 一本足の蛸

追記

アップ直後に「トロイの木馬」のたとえは変だと気がついた。別にエロゲー業界が自ら進んで木馬を城内に引き込んだわけではないのだから。でも、かわりになるいい見出しが思い浮かばないのでそのままにしておく。

お詫びと訂正

見出しと本文で『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のタイトルを間違えて、『俺の妹がこんなにかわいいわけがない』と書いていました。すみません。

追記の追記の追記

ここまで読んでくれた奇特な人は、ぜひねことか肉球とか:『表現とメディア』を併せて読むことをお薦めしたい。

*1:この文章は2009年8月9日午前9時過ぎに書いたもの。本来なら下の「お詫びと訂正」の後に配置すべきだが、重要なので前出しした。

*2:この問題について、逆に「まずくない」と主張しているわけでもない。要するに、この問題については何も主張していない。

*3:このあたりを読むと結構、編集部は慎重に危険なネタをチェックしているようなのだが……。

*4:俺の妹がこんなに可愛いわけがない』に登場する沙織とは関係ない。沙織事件 - Wikipedia参照。